最新記事

同性愛

銃乱射はテロか憎悪か、思い当たり過ぎるフロリダの闇

2016年6月13日(月)17時38分
ウィンストン・ロス

 マイアミの元公選弁護人ジョシュ・クーリーは、今回の事件はフロリダに渦巻く怒りが表出したものだという。自分の人生に嫌気がさし絶望し、誰かにその責任を転嫁したくてたまらない人々同士がいがみ合っている。フロリダは人種と階層間の緊張に満ちている。そして社会的・経済的に底辺に追いやられる人々の数は毎日増え続けていると、クーリーは本誌に語る。

「フロリダは人々が疎外感を覚えやすい場所だ。社会の隅に追いやられ、怒りを増幅させている。宗教的な過激思想に染まり、アルコールと同性愛は不適切だと考えて疑わない者にとって、フロリダは格好の攻撃対象だろう。貧しく、社会から締め出され、生きる希望もないときに、ふと通りを見渡せばゲイたちが1本500ドルもする酒を飲みながら踊っているのだから」

「同性愛者は死刑」

 弁護士でゲイのジョン・ブルノ・ドリスは、2013年にオーランド近郊のサンフォードにあるフサイニ・イスラムセンターで行われた集会で、同性愛者を罰するのは愛の行為だという説教を聞いたことがあるという。イラン系のファルーク・セカレシュファー博士なる人物が、イスラム法の下では同性愛者は死刑になると事実と異なる主張を展開し、次のように述べた。「人を肉体的な死に至らしめるのは残酷な行為に見えるが、(同性愛者については)人類の愛の証だ。さあ、慈しみの心をもって彼らを一掃しよう」

 だがオーランドの都市部は、総じて寛容な場所だ。オーランドで育ったというキューバ系アメリカ人のダマリス・デル・バレは、本誌の取材に対し次のように語った。「ディズニー・ワールドができて以来、オーランドはゲイのメッカになった。ディズニーが毎年6月にゲイのためのイベントを開いてきたから」

 ゲイのマット・ジャービスは、1年ほど前にアラバマ州からオーランドへ移住した。アラバマ州では暗黙のホモフォビア(同性愛者嫌悪)を感じたと言う。それに対してオーランドはゲイやトランスジェンダーにとって「溶け込みやすい」土地柄で、日曜の銃撃事件があるまでは安心しきっていたという。だが今、その安心感は消え去った。

「心がかき乱され、普通にしていても身の危険を感じる。ディズニーランドに行くのももう避けるべきなんだろうか」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アップル、関税で今四半期9億ドルコスト増 1─3月

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P8連騰 マイクロソ

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント財務長官との間で協議 先

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中