日銀、国債補完供給で減額措置の上限再引き上げに慎重=関係筋
写真は日本銀行本店。1月23日、東京で撮影。 REUTERS/Issei Kato
Takahiko Wada
[東京 11日 ロイター] - 国債補完供給(SLF)の減額措置を巡り、日銀が1銘柄当たりの利用上限の再度の引き上げに慎重であることが分かった。市中保有額が現行の上限である1.5兆円に到達すれば銘柄としての希少性が薄れることに加え、残存5年になれば財務省の流動性供給で調達が可能になるためだ。事情に詳しい複数の関係筋が明らかにした。
イールドカーブ・コントロール(YCC)の下で大量に購入した一部銘柄について、日銀は流動性を回復するために特別対応を打ち出してきたが、そのうち1つが終了する可能性が高まっている。
減額措置は、SLFで日銀から借りた国債について、手数料を支払って返済が免除される仕組みで、日銀は6月に減額措置の要件緩和の対象銘柄を拡充した。31年以降に償還期日を迎える10年債のうち、日銀の保有比率が80%を超える銘柄を対象に、1銘柄あたりの市中流通額が1兆5000億円程度の水準を回復するまで減額措置を利用できるとし、これまでの1兆2000億円から上限を引き上げた。このとき対象となったのは6銘柄。日銀がYCCを推進していた22年、10年金利を低位に抑制するために大規模に買い入れ、結果として市中の流通量が極端に少なくなった銘柄だ。
銘柄ごとの利用上限引き上げ以降、毎月上旬に2000億円程度、減額措置の利用があり、11月28日時点で対象銘柄は4銘柄に減少した。このうち362回債は残存5年に接近するため、年明けに要件緩和の対象から外れる。市場では、このままのペースで利用が進めば今後数カ月のうちに残り3銘柄も1.5兆円の上限に達するとみられている。
日銀では、市場参加者のニーズが一定程度あるものの、上限をさらに引き上げることに対しては慎重な見方が出ている。減額措置がフルに利用されて1銘柄当たりの市中流通額が1.5兆円に到達すれば、銘柄自体の希少性が後退するほか、残存期間が5年になれば財務省の流動性供給入札で5年物を調達することも可能との見方からだ。国債補完供給も減額措置も例外的な措置である以上、本来の制度趣旨を重視すべきだとの声が出ている。





