最新記事

仕事術

やることリストよりすごいやったことリストの効用

2016年6月7日(火)16時00分
L・V・アンダーソン(スレート誌編集者)

「やったことリスト」に魅力を感じる人は多い。「I Done This(私はこれをやった)」という直球勝負の(英語の文法はおかしいけれど)名前が付いたアプリも登場している。

 この種のリストを作る狙いは単純だ。成果を記録して把握すると、自分がテキパキ仕事を片付けているような気がして気持ちよくなり、活力が湧いてきて、生産性が高まる──と期待しているのだ。

「やったことリストを作れば、自分がやったことすべてを自分の手柄として認められる。やることリストや事前の計画に含まれていなかった成果も把握できる」と、「I Done This」のアプリを作ったジャネット・チョイとウォルター・チェンは効用を説明する。

 私が表計算ソフトに仕事の記録を付け始めたきっかけは、3つあった。1つは、上司から記事の本数を増やすよう言われたこと。もう1つは、1日の最後に「その日にやったことの中で、誇りに思えることを少なくとも2つ書き記す」よう勧める記事を読んだこと。そしてもう1つは、認知行動療法のセラピストから、有害な思い込みを克服するために日記を書くよう勧められたことだ。

自己評価の低さを克服

 私が抱いていた有害な思い込みの1つは、おそらく多くの人も身に覚えのあるものだろう。自分の実力に自信がなく、自分が今の職に就く資格のない「詐欺師」であるかのように感じていたのだ。記事の本数を増やせと上司に言われたために、その思い込みが一層強まった。

 記事をすべて記録するようにしたおかげで、この思い込みを乗り越えられた。記事がずらりと並んだリストを見れば、自分のことを詐欺師だと思う余地はない。やったことリストは、私の生産性を向上させ、自己評価の低さを克服する上で効果てきめんだった。

 自分の仕事の全体像を把握して、現実的な目標を立てるのにも役立った。アンドリーセンなど一部のやったことリスト提唱者は、1日や1週間の終わりに成果を確認した後は、リストやカードを捨てるなり無視するなりするよう勧めている。私のやり方は違う。1つのリストに、次々と書き足していくことの効用を実感している。

 1年ごとの上司との面接の際には漠然とした印象や記憶ではなく、実際のデータに基づいてその年の仕事量を示せる。しかも、どういう記事をどのくらい書いているかが一目瞭然なので、どの分野の記事を増やしたいかといった目標を立てやすい。過去の仕事の中身を曖昧にしか把握していない人は、将来の目標も漠然としたものにならざるを得ない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月PPI、前年比2.7%上昇 エネルギー商品高

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る EV駆け込

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中