最新記事

中国

オバマ大統領の広島訪問に対する中国の反応

2016年5月30日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

新華網:「来たよ、でも謝罪しない。それで満足なのかい?」

 中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」は5月29日、オバマ大統領の広島訪問に関して「来たよ、でも謝罪はしないよ。日本はそれで満足なのかい?」という(趣旨の)見出しで報道した。

 この報道でまず投げかけているのは、「オバマの任期末期における政治的パフォーマンスは、安倍が望んでいる"日本の侵略者としての犯罪性を薄めること"を叶えることができるのか?」という問いである。

 そして韓国側の不満などを例にとって、「まるで自分が戦争の被害者の国であるように装い、日本が起こした侵略戦争の責任と他国に与えた損害から、目をそむけさせるためのパフォーマンスに過ぎない」と書き立てている。

 5月27日に王毅外相が言った「広島は関心を寄せる価値はあるが、南京(事件)はもっと忘れてはならない。被害者には同情するが、しかし加害者は永遠に自分の責任から逃れることはできない」という言葉を、ここでもまたくり返している。

 新華網は最後に、「オバマはこのたびの広島行きによって日米関係を強化し、それによってさらに一段と日本を丸め込んで、アジアのリバランスというアメリカの戦略のために働かせるつもりだ」で結んでいる。

哀しき国

 なんという品格のなさだろうか。

 なぜ中国と日本が、日米のようにできないのか、考えてみたことがあるのだろうか?

 ひたすら日本を責めまくることに没頭し、日中国交正常化後に日本人が中国に対して注いだ誠意や厚意(そして金銭まで)を、すべて無にしてしまったのは誰なのか?

 もちろん戦争をしたのは良くない。そのため少なからぬ日本軍関係者は戦犯として処刑され、日本は関係国から処罰を受けている。サンフランシスコ平和条約で戦後の講話条約も成立した。そのときに「中華民国」も「中華人民共和国」も締結国として署名できなかったのは、中国に原因がある。日本敗戦後、中国内において国民党と共産党の国共内戦が起きていたからであり、「中華民国」が国連に加盟していたからだ。おまけに1950年には北朝鮮の金日成(キム・イルソン)と当時のソ連のスターリンの陰謀があったとはいえ、中国は中国人民志願軍を北朝鮮に派兵して、アメリカと対峙した。だからアメリカの占領下にあった日本は、アメリカと共に中国と対峙せざるを得ないところに追い込まれていた。

 戦後の国際関係のバランスを崩したのは、中国自身の国内事情があったからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中