最新記事

南米

ベネズエラの頭脳流出が止まらない

2016年5月23日(月)19時15分
ポール・ブレイク

抵抗か脱出か マドゥロ大統領の退陣を求める野党支持者(5月18日、カラカス) Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

 治安は悪化し、経済も危機的状況。野党は大統領の退陣を求め、デモ隊と機動隊が衝突──学歴とコネのある国民は、そのすべてに背を向け始めた。

 先月、27歳のルイス(仮名)がアメリカへの語学留学から帰国すると、荷ほどきにはロウソクを使わなければならなかった。停電だ。

 彼の国、ベネズエラは石油の埋蔵量世界一を誇るにも関わらず、慢性的な停電と食料不足が続いている。最低限の食料や薬を買うだけでも何時間も並ばなければならない。治安は最悪で、首都カラカスは昨年、人口当たりの殺人件数が世界一になった。昨年の経済成長率はマイナス5.7%で、インフレ率は180%と、経済も崩壊の淵にある。

【参考記事】「国家崩壊」寸前、ベネズエラ国民を苦しめる社会主義の失敗
【参考記事】原油下落でベネズエラが大ピンチ

 ニコラス・マドゥロ大統領は、停電はエルニーニョ現象で水力発電用のダムの水が干上がったせいだと言い、経済不振はエリートたちの妨害工作だと言う。しかし国民はそんなことは信じていない。ひどい生活を強いられるのは、政権が無能なせいだ。

チャベスと決別

 ルイスはこれまでの人生の大半を、社会主義のベネズエラで過ごしてきた。両親は、マドゥロの前に17年間社会主義政権を率い、貧困層と労働者の味方と言われたウゴ・チャベス前大統領を熱烈に支持していた。だが、大学を出て、米英の会社でも働いたことがあるルイスは違う。この国から脱出すると決めたのだ。既に、逃げられる人たちは逃げ出している。

【参考記事】反米カリスマ、チャベスが残した負の遺産

 カラカス中央大学の社会学者トマス・パエズによれば、国外に住むベネズエラ人は150万人。その90%は、2000年以降に国を去った人々だという。チャベスが権力を握ったころからだ。そして彼らの大半は、学歴や技術のある人々だ。パエズによれば90%は学士以上、40%が修士以上で、博士も約12%いる。頭脳流出が起きているのだ。

 彼らの多くは元々がヨーロッパからの移民で、ヨーロッパとの二重国籍を持っていたり、親戚を頼ることができた人々だ。

 ルイスはそれほどラッキーではないが、決意は固い。就労ビザを出してくれそうなアメリカの企業に就職するつもりだ。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、インドの原油購入停止「承知せず」 米印合意

ワールド

ロシア、ウクライナのエネ施設に集中攻撃 新たな3カ

ワールド

焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほく

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 7
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 10
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中