最新記事

日本人論

【まんが】『武士道』を書いたのはキリスト教徒だった

100年以上前に新渡戸稲造が英語で書いた世界的ベストセラーから、日本人の特質を再発見し、人生の知恵を得る(2)

2016年4月5日(火)10時55分

 日本人は日本論・日本人論が好きだ。だが、外国人の手によるもの、日本人が日本の読者に向けて書いたものは多いのに、日本人が外国の読者に向けて書いた日本論はあまり見かけない。どんな自画像を描くかだけでなく、どう他国に理解してもらうかも大切なはずだが、日本人によるそうした努力はあまりなされてこなかった。

 否、そうした日本論は実はある。100年以上も前に英語で書かれ、アメリカで出版された『Bushido: The Soul of Japan』だ。著者は明治時代の教育者であり思想家であった新渡戸稲造。日本人の精神を欧米人に理解してもらおうと、この本(日本語では『武士道』)を英語で書き上げた。

 出版されるやいなや高い関心が寄せられ、フランス語やドイツ語にも翻訳されて世界的なベストセラーとなった。西洋の思想と比較しながら"日本人の魂"である武士道の本質を解説した『武士道』から、多くの人が人生の知恵や教訓を得たという。今も各国で読み継がれ、まさに名著だ。

 このたび、この名著がまんが化されたのを機に、『まんがで人生が変わる! 武士道――世界を魅了する日本人魂の秘密』(新渡戸稲造・著、カネダ工房・まんが、三笠書房)から「プロローグ」と「第1章」を抜粋し、4回に分けて掲載する。


『まんがで人生が変わる! 武士道――世界を魅了する日本人魂の秘密』
 新渡戸稲造 著
 カネダ工房 まんが
 三笠書房

※シリーズ第1回【まんが】日本人の礼儀正しさは「武士道」から来ている?

◇ ◇ ◇

人に勝ち、自分に克つ! 強靱な精神力を鍛える――新渡戸稲造の『武士道』を知ろう!

師範「ステファニー。日本へ行ったら、新渡戸稲造の『武士道』を学びなさい」

ステファニー「はい師範! 昔のサムライの戦い方や、驚くような技が学べるのでしょうか?」

師範「そうではない。武士道とは、日本に根づいた精神であり、崇高な生き方を教えるものだ。いわば日本の魂だ」

ステファニー「日本の魂......?」

師範「そうだ。ただ......おそらく、今の日本の若者もほとんどが、武士道とは何なのか、知らずに暮らしているだろう。だからステファニー、日本の若者と友達になって、『武士道』を一緒に読みなさい。そこに書いてあることはきっと、おまえにも伝わるはずだし、現在の日本の若者も、『武士道』をとおして日本人の生き方を学び直すべきなのだ」

ステファニー「わかりました! 剣道の強い女の子と友達になって、『武士道』を勉強します!」

<参考記事>【動画】外国人を(嵐よりも)魅了するサムライ集団「TAO」って何者?

新渡戸稲造とは何者か!?

『武士道』の内容に入る前に、『武士道』を書いた新渡戸稲造がどんな人だったのか、彼が生きたのはどんな時代だったのか、簡単に見てみましょう。

 新渡戸稲造は1862年、現在の岩手県盛岡市に生まれました。1862年というと、江戸時代の終わりです。

 江戸時代、200年以上の長期にわたって日本は鎖国していたのですが、1853年にアメリカ合衆国の「黒船」がやってきて、日本に開国を迫りました。これを受けて鎖国を解いた日本は、徳川幕府を中心とした武家社会から、天皇を中心とした社会へと移行します。これが明治維新です。このとき、日本の社会はヨーロッパやアメリカの制度・文化を非常にうまく取り入れて、急速に近代化しました。

mangaBushido_chart1b.jpg

『まんがで人生が変わる! 武士道――世界を魅了する日本人魂の秘密』より

 新渡戸は、「黒船」来航と明治維新との間に、武士の家の三男として生まれます。幼いときはサムライの子としての教育を受けていたでしょうが、明治維新によって、サムライという階級は廃止されます。また、新渡戸家は当時としてはかなりハイカラな雰囲気で、西洋で作られたものが家の中に多くあったそうです。

 武士道の教えと西洋への憧れが、ともに稲造少年を育んでいったといえます。

新渡戸は、世界でどう活躍したか?

 新渡戸はやがて農学を学ぶことを志し、札幌農学校(現在の北海道大学)に入学します。

 ここは「少年よ、大志を抱け」の言葉で有名なウィリアム・スミス・クラーク(1826~1886年)が初代教頭を務めた、当時トップのエリート校です。

 新渡戸の入学と入れ違いでクラーク博士はアメリカに帰国してしまいましたが、博士の影響で学内にはキリスト教が広まっており、西洋のこともたくさん学べました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中