最新記事

言論統制

公開状「習近平は下野せよ」嫌疑で拘束か?――中国のコラムニスト

2016年3月22日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

昨年12月、言論の自由を求めるデモ(香港) Bobby Yip-REUTERS

 3月4日に党系列メディアに公開状「習近平は辞職せよ」が現れハッカーの仕業とされたが、内部に犯人がいることが判明。コラムニストの賈葭(かか)氏が拘束された。筆者は彼が元いたメディアから取材を受けたばかりだ。

なぜ賈葭氏は拘束されたのか?

 3月15日付の本コラムで筆者は<新華社が「中国最後の指導者習近平」と報道――ハッカーにやられたか?>を書いた。その中で新疆ウィグル自治区の党委員会が創設者の一つになっている「無界新聞」に、3月4日、「習近平は辞職せよ」という趣旨の公開状が現れたことをご紹介した。それはハッカーによるものとされていたが、その後、ハッカーの仕業ではなく、内部に犯人がいて操作したという痕跡が見つかったという。

 それも海外を含めた外部と内部とのタイアップによることが分かり、無界新聞関係者がつぎつぎに調査を受ける羽目になっていた。

 コラムニストでジャーナリストでもある賈葭(かか)氏(35歳)は、3月4日に無界新聞に公開状がアップされる前、実はアメリカにいた。帰国後、微信(ウェイシン)を通してネットにアクセスしたときに「習近平は辞職せよ」という公開状が無界新聞のニュースサイトにアップされているのを発見。急いで、無界新聞のCEOである欧陽洪亮氏に連絡した。欧陽洪亮氏は、賈葭氏の昔の同僚だ。

 当局の調べに対して欧陽洪亮氏は「このようなおぞましい公開状は、賈葭氏からの連絡で初めて知った。彼はしばらくアメリカにいた」と述べている。まるで責任転嫁だ。そこで賈葭氏は「もしかしたら、自分に嫌疑がかかってくるのではないか」とそれとなく予感していたという。

 3月15日、賈葭氏は香港に行くために北京空港にいた。

「今から香港行きの飛行機に搭乗する」という知らせを妻が受けたあと、連絡はすべて途絶えた。

 搭乗寸前に、北京の飛行場で公安に拘束されたのである。

賈葭氏は、かつて、「新華社」傘下の報道機関にいた

 実は賈葭氏はかつて、中国政府の通信社である「新華社」傘下の週刊誌『暸望東方周刊』で編集を担当し、また『大家』のコラムで主編(編集長)を担うなど、多くの雑誌と関わっていた。中国語で「大家」というのは「民衆」とか「皆さん」といった意味である。肝心なのは、彼は新華社系列で仕事をしていた経験があるということだ。

 3月15日付のコラム<新華社が「中国最後の指導者習近平」と報道――ハッカーにやられたか?>では、新華社のウェブサイトに載った「中国最後の指導者・習近平」は「中国最高の指導者・習近平」の誤記であったと新華社が言っているということを、「追記」で書いた。最初はハッカーとされたが、新華社の場合は「誤記」だったことにして、全人代を乗り切った形だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中