最新記事

対テロ戦争

ISISへ経済封鎖、米国が投入する「新兵器」

2015年11月26日(木)19時03分

 政府間会合である金融活動作業部会(FATF)の今年のレポートによれば、イスラム国の支配領域内では20以上のシリア系金融機関が営業を行っている。イラクでは、米財務省がイラク政府当局者と連携し、同グループの支配領域内の銀行支店をイラク国内及び国際的な金融システムから切り離した。

 米連邦捜査局(FBI)で対テロ金融作戦部門の主任を務めるジェラルド・ロバーツ氏は、シリア以外から徴募されるイスラム国メンバーは金融取引の経路を維持していることが多く、当局はこれに「便乗」して資金ルートを追跡しているという。

 ロバーツ氏は先週ワシントンで開かれた銀行業界のカンファレンスで、「彼らが通常の銀行システムを使っているのは分かっている」と述べ、さらに、若年のイスラム国メンバーはテクノロジーに強く、「ビットコイン」などの仮想通貨にも詳しいと話した。

 前出のレビット氏によれば、「IS」、「ISIS」、「ISIL」などの略称で知られるイスラム国は、他の手段を用いるには金額が大きすぎるために、やむなく市中銀行を利用する場合もあるという。

 米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)では一連の「ビジネスルール」を用いて、金融機関から受領する1日約5万5000件の報告から、イスラム国関連の活動の兆候を選別していると、FinCENの広報担当者は語る。

 ルールそのものについての説明は拒否されたが、当局筋によれば、情報当局が照合を試みるデータとしては、氏名、IPアドレス、メールアドレス、電話番号などがあるという。

 この照合によってFinCENは、「見た目では無関係な個人・団体を結びつけることができる」とFinCEN広報担当者は語る。イスラム国との関連が疑われる金融活動の手掛りが発見される件数は、4月の800件から、現在では月間約1200件に増えているという。

 米政府に金融取引報告を提供しているかどうかについて、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、JPモルガン、ウェルズファーゴはコメントを拒んでいる。こうした報告は非公開で提供されている。

 シティグループ、HSBC、スタンダード・チャータードからは、問い合わせに対する回答を得られていない。

「第2次津波作戦」開始

 当局者によれば、イスラム国関連の金融取引記録の利用は、シリア領内での空爆に向けた情報収集活動の一部に過ぎない。ドローン(無人機)による空中偵察などの手法も用いられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中国防相が会談、ヘグセス氏「国益を断固守る」 対

ビジネス

東エレク、通期純利益見通しを上方修正 期初予想には

ワールド

与野党、ガソリン暫定税率の年末廃止で合意=官房長官

ワールド

米台貿易協議に進展、台湾側がAPECでの当局者会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中