最新記事

武器

残虐非道のエジプト大統領がイギリスで大歓迎

2015年11月5日(木)16時32分
アンドルー・スミス

 当然ながら、メディアの批判が収まるとすぐに、武器輸出は再開され、「体裁を繕うための禁輸」と、活動家に皮肉られる始末だった。英政府が取った措置はその典型だ。イギリスは13年8月、エジプト向けの武器輸出49件を差し止めたが、わずか2カ月後には24件が許可された。許可が完全に取り消されたのは7件にすぎず、お得意様のエジプト軍をほとんど待たせることなく通常通りの武器売却が再開された。

 人権問題を批判するのは口先だけで、武器を売りたい本音はみえみえだ。クーデター以後、英政府が認可したエジプト向けの軍事物資の輸出は総額1億3070万ドルに上る。許可リストにはシナイ半島で武装組織対策に使用される戦闘車両の部品6150万ドル、目標指示装置3840万ドルなどが含まれる。

武器展示会には英政府がご招待

 英内務省の共催で今年3月に開催された「安全保障・警備展」には、英政府の招きでエジプト軍の代表が来場。英NGO「武器貿易反対キャンペーン(CAAT)」による情報開示請求で、エジプト代表が会場で武器輸出の促進を図る行政機関・英国貿易投資総省国防安全保障機構(UKTIDSO)の代表と会談したことが明らかになった。エジプト代表は今年9月にロンドンで開催された防衛セキュリティー機器国際展(DSEI)にも参加。このときはシシ大統領の首席補佐官も一時的な外交特権を与えられて会場を訪れた。

 政治家と軍事産業は何事もなかったかのようにエジプトの軍部と付き合っているが、シシの強権支配は相変わらずで、市民が抑圧される状況は改善されていない。

 キャメロンは、シシと写真を撮りながら、シシ政権に殺された人々の家族のことや牢獄で衰弱していくジャーナリストのことを一瞬でも考えるだろうか。つい2年前、エジプトに人権尊重と民主化を要求した自分のことを思い起こすだろうか。

 シシが欧米諸国の政治的軍事的な支持を得ている限り、エジプトの人々にとっての状況は何も変わらない。2011年に蜂起した民衆は将来への希望と民主化への欲求に満ちあふれていた。だがそれは、残酷で独裁的な政権に踏みにじられ、欧米諸国はそんな政権を黙認し支え続けている。

*筆者は、イギリスの市民団体「武器貿易反対キャンペーン(CAAT)」のスポークスマン

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中