最新記事

シリア

ロシア参戦で錯綜するシリアの空爆地図

2015年10月2日(金)17時45分
ジャック・ムーア

 米軍の空爆の多くは、トルコ国境に近いクルド人の都市コバニに対して行われてきた。コバニは昨年10月ISISの手に落ちたが、米軍の支援を受けて、クルド人部隊が奪還に成功。その後もISISは再侵攻を試み、クルド人部隊との間で激しい戦闘が繰り返されている。ISIS掃討に及び腰だったトルコは7月末、ようやく米軍の基地使用を許可。米軍は8月、トルコのインジルリク空軍基地から有人戦闘機による空爆を開始した。

イギリス

 イギリスは、公式にはまだシリア領内の空爆を行っていない。2013年8月に英議会の決議で攻撃が禁じられたからだ。だが、英人権団体リプリーブの情報公開請求で、英軍のパイロットがISISに対する空爆に参加していたことが7月に明らかになった。イギリスはまた、ISISの戦闘員となったイギリス人2人をドローン攻撃で殺害している。9月8日にデービッド・キャメロン首相自らが発表した。

フランス

 フランソワ・オランド仏大統領は9月27日、ISISに対して初の空爆を行ったと発表した。フランスはこの1年、シリアのISISを空爆すればアサド政権を利することになるとして攻撃を控えていたが、シリア難民の大量流入を止めるために参加を決めた。フランスは今週、アサド政権の戦争犯罪についての捜査にも着手している。

トルコ

 シリアの北に位置するトルコは、アサド政権の打倒を目指している。今年はまだアサド軍に対する攻撃は行っていない。しかし、7月20日にトルコ南部の自爆テロで30人以上が死亡し、さらに国境付近での銃撃でトルコ軍兵士が1人殺害されると、7月24日にISISに対して初の空爆を行った。トルコ政府はまた、国境に接するシリア北部からISISを排除し、「安全地帯」を作ることをアメリカなどに提案している。難民を収容すると同時に、シリアの反体制派の活動拠点にするためだ。

 一方、ISISと同じイスラム教スンニ派に属するトルコ政府に対しては、ISISの勢力拡大を助けているという批判もある。トルコのメディアは、同国の情報機関がISIS向けとみられる武器をシリアに送ったと報じ、米政府からはトルコ国内のISIS戦闘員を放置していると批判されている。

イスラエル

 ISISへの空爆には参加していないが、非武装地帯のゴラン高原を挟んでシリアと国境を接しているためとばっちりを受ける。シリアからロケット弾が飛んできたり、イスラエル軍によれば同国内に潜入しようするテロリストもいる。イスラエルを危険にさらすこうした行為は容赦しないとして、軍はためらわず反撃している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、最終的な債務再編まで何度も返済猶予か=ア

ビジネス

中国、来年も政府債発行を「高水準」に維持へ=関係筋

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中