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安保法案を中国はどう見ているか?――ネットの声も含めて

2015年9月15日(火)16時15分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 また、これまでの「周辺事態法」を「重要影響事態法」と改正し、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」が発生した場合には、「後方支援に地理的な制約がない」ことを明確にしたほか、「支援の対象もアメリカ軍に限定しない」などとした。

 これらの問題に関して香港系の、比較的中立なウェブサイト「鳳凰網」は、「新安保法案の実質とは何か?」を中心に討論番組を報道した。

 そこで討論された概要を示す。

■なんといっても、これは一つの法案ではなく、11個もの関連法案を「打包」(ダーバオ)で通そうというものだ。(筆者注:「打包」というのは本来「梱包」という意味ではあるが、最近ではレストランなどで食事をしたて食べ残した場合、捨てるのはもったいないので、パックに入れて包み、家に持ち帰ることを指している。これまでは官費で客を接待し必要以上に高価なご馳走を大量にオーダーして、残りを招待した側が持ち帰ることが、改革開放後の中国の習慣となっていた。習近平政権になってから「ぜいたく禁止令」が出されたりして、この現象がなくなったため、レストランは閑古鳥が鳴いているが、「打包」という言葉を使うとき、女性キャスターが目の奥で笑っているのは、「持ち帰り現象」を誰もが想像するからだ)。

■今回の安保法案は、日本敗戦後の平和憲法で許されている範囲を越えているので、本来なら憲法改正をおこない、日本国民の意志を問わなければならない。そのためには3分の2以上の国会議員の賛成が必要で、その上で国民投票を実施し、国民の2分の1以上の賛同を得なければならない。安倍(首相)には、その自信がないので、現行の憲法の中で、その修正をおこなおうとしている。

■これまでは専守防衛で、日本の本土が攻撃された場合にのみ武力行使をしても良いことになっていた。ところが「周辺事態法」という地理的概念を取っ払って、「重要事態法」に変えた。ということは地球の裏側だろうと、日本の利害にとって「これは重要だ」と判断すれば、どこにでも出撃していいことになる。アメリカや日本の他の友好国が困っていると判断すれば、日本も出動していい。それも武力を行使していいので、「新安保法案」は「日本猛虎可以出法案(日本が猛虎として出動していい法案)」ということになる。

■自衛隊法は実際上撤回されて、国防軍法となるだろう。

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