最新記事

米外交

習近平歓迎ムードはゼロ、米中関係改善は望み薄

南シナ海岩礁埋め立てやサイバー攻撃に怒る対中強硬派は「国賓待遇をやめろ」と要求

2015年9月11日(金)17時55分
シャノン・ティエジー

ムードは一変 13年の非公式訪米時にはなごやかなムードのオバマと習だったが Pete Souza-THE WHITE HOUSE

 ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は先月末、中国を訪れ、今月に予定されている中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の訪米に向けて最終的な調整を行った。2日間の滞在中にライスは楊潔(ヤン・チエチー)国務委員、王毅(ワン・イー)外相らに加え、習主席とも会談した。

 ホワイトハウスの発表によると、ライス訪中の目的は「より有益な2国間関係を築こうとするアメリカの決意を強調し、9月の習主席の公式訪問を前に、相違がある分野について議論する」ことだった。

 ここ数カ月、「相違がある分野」が「有益な関係」に影を落としている。南シナ海、サイバーセキュリティー問題、さらに最近では中国の人民元切り下げに対し、米側から「為替操作」と非難する声が上がるなど、経済をめぐっても両国関係はぎくしゃくしている。有益な関係など望めそうもないのが現状だ。

 ライスも中国側の会談相手も、公式の発言では南シナ海やサイバー攻撃についていっさい触れなかった。双方とも「共通の利益」や「協力の可能性」について語り、前向きな姿勢を打ち出そうと必死だった。

「2国間でも、地域でも、地球規模でも、米中の実際的な協力をさらに強化し、双方の間にある微妙な問題に建設的な方法で対応するため、われわれは話し合う用意がある」と、習はライスに語った。

 ライスも米中関係は強固な土台に支えられていると強調。「ここ数カ月、2国間関係は進化し、強化された」と述べた。

サプライズは期待できず

 だが、米中のメディアと世論はそうは見ていない。良好な関係を彼らに印象付けるには、外交上の決まり文句だけでは足りない。昨年11月の米中首脳会談で打ち出された温室効果ガス削減目標の合意のようなサプライズが必要だ。残念ながら、今回の習の訪米では大きなサプライズは期待できそうにない。

 当初は二国間投資協定(BIT)締結に向けた大幅な進展が期待されていた。だが、実務レベルでの交渉はさほど順調ではない。習がライスに迅速な進展を望むと述べたことが、逆に難航ぶりをうかがわせた。

 もう1つ、サプライズになり得るのは「空域で不慮の遭遇をした場合の行動基準」に関する合意だが、この交渉も大した動きはなさそうだ。その証拠に中国国防省の報道官は「複数の協議」を通じて「前向きな進展があった」と述べるにとどまり、具体的な内容は明かしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面

ワールド

アングル:ヒット続出、ホラー映画が映画館救う 著名

ワールド

EUに8月から関税30%、トランプ氏表明 欧州委「

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中