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領土問題

中国にらみスクランブル用戦闘機を配備、フィリピンが元米軍基地を再利用へ

領有権拡大を打ち出す中国へ対抗、200億ドルを投じて軍の近代化も

2015年7月17日(金)17時36分

7月16日、フィリピン軍が来年以降、スービック湾にある元米海軍基地に、戦闘機10機以上を配備することが明らかに。写真は南シナ海での演習に参加する同国海軍の兵士。昨年6月撮影(2015年 ロイター)

[マニラ 16日 ロイター] - フィリピン本島の西側に位置し、中国などと領有権を争う南シナ海に面するスービック湾。フィリピン軍は来年以降、同湾にある元米海軍基地に、戦闘機10機以上とフリゲート艦2隻を配備する。複数の軍当局者が明らかにした。

安全保障問題の専門家らは、同基地を23年ぶりに軍事利用することで、南シナ海での中国の動きに対し、より効果的な対応が可能になると指摘する。

フィリピンの専門家ロメル・バンラオイ氏は「軍事基地としてのスービックの価値は米国が証明済み。中国の防衛当局者たちもそれを分かっている」と述べた。

スービックはかつて、世界で最も大きい米海軍基地の1つだったが、冷戦終結後にフィリピンが米国との軍事協定を破棄し、1992年に閉鎖されていた。その後、フィリピン政府は同基地を経済特別区に指定した。

バティノ国防次官はロイターに対し、同区を管理するスービック湾都市圏開発庁と軍の間で、基地の一部を使用できる15年のリース契約が5月に結ばれたことを明らかにした。

米軍艦は2000年以降、フィリピン軍との合同演習の際に停泊したり、修理や補給のため同基地の商業施設を利用するなど、定期的にスービック湾に寄港している。

当局者らによれば、スービック湾が再び軍事基地として使用されれば、米海軍はフィリピンとの新軍事協定のもと、スービック湾の利用を大幅に拡大できる。ただ、昨年4月に署名された新軍事協定をめぐっては、フィリピンの元上院議員らが憲法違反だとして最高裁に提訴しており、同協定は棚上げされた状態にある。

スービックの基地再利用は、中国の海洋進出に対抗するフィリピン軍の新たな一手となる。米国、日本、ベトナムとの安全保障協力強化に加え、フィリピンは向こう13年間で200億ドル(約2.5兆円)を費やし、軍を近代化する計画だ。

こうした動きについて中国国防省は、「地域の平和と安定にフィリピンがさらに貢献することを期待する」とロイターにファクスで答えた。

航空団を移転

フィリピン軍高官2人が匿名でロイターに語ったところによると、2016年初めにまず、韓国航空宇宙産業<047810.KS>が製造する軽攻撃機「FA50」2機が元スービック海軍基地に配備される。

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