最新記事

ハッカー

シリア反体制派に色仕掛けの罠

女性のふりをしてチャットで戦闘員に近づき、写真をクリックしたらアウト!という仕掛けで敵のデータを盗み出す

2015年2月13日(金)12時56分
クキル・ボラ

万国共通 美しい女性に弱いのはシリアの反体制派も同じ Peter DazeleyーPhotographer’s Choice/Getty Images

「私の誕生日は88年3月10日よ」「え、僕と同じだ!」「素敵な偶然ね。私の写真を送るわ」。戦場で極限の緊張が続くなか、そんな甘い言葉をささやかれたら、思わず気が緩んでしまうのも無理はないのかもしれない。

 アサド政権と反政府勢力の対立が続くシリア内戦では、ネットを使ったプロパガンダや戦闘員の募集が注目を集めているが、ネットの活用法はそれだけにとどまらない。アサド政権を支持するハッカー集団が女性のふりをして反体制派に接近し、相手のパソコンから機密情報を盗み出した実態が明るみに出たのだ。

 アメリカのサイバー・セキュリティー企業ファイア・アイの報告書によれば、ハッカー集団はまず女性を装ったスカイプのアカウントを用意。反体制派の男性戦闘員とチャットを通して親密になった上で、女性の写真入りのファイルを送り付けたという。相手がそれをクリックすると、パソコンにウイルスが自動的にダウンロードされ、データを盗み出す。男性を誘惑するためのチャットの脚本まで用意されていたという。

 13年11月〜14年1月にかけてハッキングされたデータは7.7ギガバイトに達し、その中には反体制派陣営の戦闘計画や必要物資の情報、大量の個人情報などが含まれていた。「この計画を誰が主導したのかは分からないが、アサド陣営がデータを入手したとすれば強力な武器となっただろう」と、ファイア・アイは指摘している。

 ハッカー集団が仕掛けた罠はチャットだけではない。反体制派向けの偽サイトを作成し、そこに女性のライブカメラ映像へのリンクを掲載。それをクリックすると、不正ソフトが組み込まれたサイトに誘導される。さらにフェイスブックの偽のログインページに誘導して個人情報を入力させる仕掛けもあった。

 被害者はシリア国内だけでなくレバノン、ヨルダンなどの中東各国にも及んでいる。色仕掛けに弱いのは万国共通?

[2015年2月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米イーベイ、第2四半期売上高見通しが予想下回る 主

ビジネス

米連邦通信委、ファーウェイなどの無線機器認証関与を

ワールド

コロンビア、イスラエルと国交断絶 大統領はガザ攻撃

ワールド

米共和党の保守強硬派議員、共和下院議長解任動議の投
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中