最新記事

ヨーロッパ

ギリシャだけじゃない! 欧州で極左が大躍進

経済危機を背景に各国で新世代の極左政党が人気を集めているが

2015年1月26日(月)12時24分
ポール・エイムズ

新勢力 ギリシャの首都アテネでは総選挙を前に、ツィプラス党首(中央)率いる急進左派連合のポスターがあちこちに(15年1月) Marko Djurica-Reuters

 ポニーテール姿のスペインの統治者──そんな人物は公式肖像画を見る限り、1808年に退位した国王カルロス4世を最後に現れていない。

 だがその復活は近いのではないか。ヨーロッパの政界や経済界には今、そんな不安が広がっている。不安の的であるポニーテールの主は、パブロ・イグレシアス。痩せた体をした36歳の政治学教授だ。

 イグレシアスのもう1つの顔は、極左政党ポデモス(「私たちはできる」の意)の党首。このポデモスがスペイン政治の土台を揺るがし、ヨーロッパに衝撃を起こしている。

「われわれの大陸の歴史における最良の瞬間は革命でつくられ、王や神や大地主より重要な権利を持つ人民に生み出された」。14年5月の欧州議会選挙で当選したイグレシアスは、議会での初演説でそう語った。「ヨーロッパの最大の遺産は自由を求め、隷属を拒否する人民の意思だ。それが民主主義だ」

 イグレシアスは主流派政党に対する不満の波に乗る、新世代の左派指導者の象徴だ。ユーロ圏経済危機への主流派政党の対応に、多くの有権者は不信感を持っている。注目を集めるのは、フランスの国民戦線やイギリス独立党といった極右政党の台頭だが、その裏で極左政党も大躍進中だ。

 ギリシャでは、緊縮財政に反対する急進左派連合(SYRIZA)への支持が高まっている。1月25日に行われた総選挙では、予想通り与党・新民主主義党に圧勝した。

 14年11月上旬にアイルランドで行われた世論調査では、左派民族主義のシン・フェイン党が一番人気。景気が落ち込んでいたアイルランドが、EU(欧州連合)トップの成長国として復活しているにもかかわらずだ。

 ドイツでも先頃、旧東独の支配政党の流れをくむ「左派党」が、初めて主要州の政権を担うことが決まった。同党のカトヤ・キッピング共同党首(36)は14年の夏に、500ユーロ相当の旅行クーポンを貧困家庭に配布せよと訴えて話題になった人物だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、カリフォルニア州で販売停止命令 執行は9

ワールド

カナダ、北極圏2カ所に領事館開設へ プレゼンス強化

ワールド

香港トップが習主席と会談、民主派メディア創業者の判

ワールド

今年のシンガポール成長予想、4.1%に上方修正=中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中