最新記事

国連

人権侵害の常習国が人権保護の監視役?

人権理事会の新理事国に中国やロシアが選ばれたことで国連の欠陥がまた1つ明らかになった

2013年11月13日(水)19時01分
サマンサ・スタインバーン

失望 人権侵害で知られる国々の選出で非難が殺到 Bigstock

 中国、ロシア、サウジアラビア、ベトナム、キューバ、アルジェリア......。これらは国連人権理事会の新理事に選出された国の一部だ。今月、理事国47カ国のうち14カ国が改選されたが、その結果に人権団体から批判が殺到している。

 任期3年の理事国の役割は、国連加盟国の人権保護状況を監視し、人権保護についての意識を高めること。だがその役割を担う立場に就いた国々には、人権侵害について問題視された過去を持つ国が含まれていた(他に理事国に選ばれたのはイギリス、フランス、モルディブ、マケドニア、メキシコ、モロッコ、ナミビア、南アフリカ)。

「中国、キューバ、ロシア、サウジアラビアは自国民に対し、組織的な人権侵害を行っている。他国についても、国連の場で人権保護に関する議決を行うときは一貫して反対に回ってきた」と、NGO「国連ウォッチ」の代表ヒレル・ニューアーは言う。

 たとえばシリア内戦で反体制派を虐殺しているバシャル・アサド政権を非難しようとしても、こうした国々は人権理事会の決議に反対しかねない。人権意識の低い国を「人権問題の『判事役』に任命するのは、放火魔を町の消防署長にするようなものだ」と、ニューアーは指摘する。

 人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、中国やロシア、サウジアラビア、ベトナム、アルジェリアは過去に、国連が任命した専門家による人権侵害調査を拒否したと非難する。理事会にこうした国が入ったことで、組織の取り組み全体が阻害されるかもしれない。

「中国、ロシア、サウジアラビア、キューバの選出により、人権擁護に前向きな理事国の仕事は難しいものになる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのペギー・ヒックスは言う。「人権向上のため真剣に活動している国々は、スリランカや中央アフリカ共和国、シリアなどにおける深刻な人権侵害に対し、これまでの倍の努力をしなければならなくなる」

「不幸中の幸いは、国連人権理事会には拒否権を持つ国がないことだ。人権保護に前向きな主流派の努力次第では、意味のある結果も得られるだろう」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米主要産油3州、第4四半期の石油・ガス生産量は横ば

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

米首都近郊で起きた1月の空中衝突事故、連邦政府が責

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中