最新記事

中南米

ブラジルが大規模デモでW杯に「ノー」?

サッカーの国ブラジルでW杯開催費用の国民負担に怒りが爆発

2013年6月19日(水)18時20分
タリア・ラルフ

20年ぶり バス値上げなどをきっかけに全国で20万人がデモに参加した(写真はサンパウロ) Paulo Santos-Reuters

 ブラジルではこの20年で最大級のデモが続き、全土で少なくとも20万人の市民が14年ワールドカップ開催でかさむ国民負担に反対の声を上げている。

 リオデジャネイロでは10万人が街頭行進した。無秩序状態は回避できたが、警察に石を投げ、官庁施設に損傷を与え、車に火をつける場面もあったとロイター通信は伝える。

 サンパウロではバス基本料金の3レアル(1.4ドル)から3.2レアルへの値上げに怒りが収まらず、約6万5000人がデモに参加した。

「みんな不満だらけ」とサンパウロで16歳の息子と参加していたマリア・クラウディア・カルドソはAP通信に語った。「税金はがっぽり取るくせに汚職まみれで、治安も教育も医療も最悪」。このデモで政治家は国民の不満に気付いてほしいという。

 ジルマ・ルセフ大統領は18日、デモ発生以来初めてのコメントでデモへの支持を表明したとBBCが伝えた。

「わが政府は変革を求める声に耳を傾けている」と国民の怒りをなだめながら、「デモでは世代を超えて共にブラジル国旗を振り、国歌を歌い、よりよい国に向けて奮闘している。これぞ民主主義」とデモ参加者にリップサービスを送った。

 首都ブラジリアでは市民が国会議事堂の非常線を超えて屋根に上った。またベロオリゾンテ、クリチバ、ビトリア、フォルタレザ、レシフェ、ベレン、サルバドルなど11都市で全国規模のデモが起きた。

 警察とデモ参加者あわせて20人以上のけが人が出たと伝えれれている。警察は催涙ガス、ゴム弾などの実力行使で鎮圧しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。事実、多くの暴力行為が録画されユーチューブに投稿されている。

 現在は警察がゴム弾を使用しないことをデモの指導者たちと合意し、落ち着きを取り戻しつつある。だがナバネセム・ピレー国連人権高等弁務官も警察と市民の双方に平穏を呼びかけるなど、世界がブラジルのデモの行方を注視している。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中