最新記事

中国政治

セックスと嘘と新・重慶事件

2012年12月19日(水)17時55分
メリンダ・リウ(北京支局長)、長岡義博(本誌記者)

微博も結局は当局が管理

 だが微博では、情報が瞬く間に拡散する一方で、その熱がすぐに冷めてしまうこともある。物事が極端に単純化されて伝わり、ユーザーが早まった結論に飛び付く恐れがあると警告する専門家も少なくない。

 共産主義青年団の機関紙である北京青年報は最近、北京市の党幹部が明らかに偽のセックスビデオをもとにしたゆすりに遭っていると報じた。それによると犯人は、約3万ドル支払わなければ「セックスビデオをネットで公開し、近所に写真をばらまいてやる」という脅迫状を送ってきた。

 このケースでは、脅迫を受けた党幹部は犯人の言いなりにならなかったが、同じような脅迫を受けた役人たちは「たとえ無実で写真が合成されたものだと分かっていても、(醜聞になるのが)恥ずかしいから沈黙を守っている」という。

 ただ、雷のセックスビデオに関しては本物とみてよさそうだ。地方レベルとはいえ、党幹部のスキャンダルが習近平(シー・チーピン)総書記率いる新指導部の発足直後に暴かれるのは示唆的だ。

 ウィキリークスが暴露した米外交公電によれば、習ら建国の功労者の子弟でつくる太子党は、自らを国家の正統な後継者と考えている。習も国土全体に蔓延する汚職がいかに中国の尊厳を損なっているか熟知しており、今後、徹底的な汚職取り締まりに乗り出す可能性がある。

 そもそも微博は中国当局の完全なコントロール下にあり、習の意にそぐわない情報であれば、即座に検閲されていたはずだ。今回の一件はこれから中国で始まる「汚職狩り」ののろしなのかもしれない。

 だとすれば、セックスと嘘とビデオテープが今後も微博を賑わせるのは間違いなさそうだ。

[2012年12月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低

ビジネス

日本企業の政策保有株「原則ゼロに」、世界の投資家団
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中