最新記事

中国政治

セックスと嘘と新・重慶事件

2012年12月19日(水)17時55分
メリンダ・リウ(北京支局長)、長岡義博(本誌記者)

大衆受けする性的醜聞

 今年8月、男女6人による乱交パーティーの写真約120枚がネットに流出した。なかでも話題になったのは、性交中の際どい写真ではなく、黒い下着姿の女性2人と、メガネ以外は全裸の男性3人が並んで収まった「記念写真」だ。

 写真がネットで広まると、この男たちは安徽省廬江県の共産党幹部だという声が上がり始めた。だが県側はこの指摘を断固否定。ある新聞には「裸の男はわが県トップではない──県当局」という見出しが躍った。

 結局県は最後まで、あの写真は5年前に「誰とも知れぬ遊び人たち」を撮影したものだ、という見解を崩さなかった(後に男性1人が党の下級職員であると認めてクビにされたが)。

 昨年の「陰毛大臣」事件も強烈だった。当時江西省の政府副秘書長だった呉志明(ウー・チーミン)は、2人の愛人とお楽しみ中のところを警察に踏み込まれて逮捕された。その室内にはコンドームとバイアグラ、それに2冊の「快楽日記」があったという。

 日記は呉のもので、1冊には計136人の女性とセックスをした日時や満足度が律儀に記録されていた。さらにもう1冊には、それぞれの女性の陰毛が貼り付けられていた。

 呉の「目標」は、15年までに1000人の女性と寝ることだったとされる。ネチズンの間ではこの日記を印刷して、教科書として政府関係者に配るべきだという冗談も飛び交った。

 とはいえ、微博をはじめとする中国のメディアで性的な話題が盛んに取り上げられるようになったのは、セックススキャンダルそのものが増えているという事実だけでは説明できない。そこにはセックス絡みの醜聞は売れる、という古今東西に共通する真理がある。

 今も検閲は存在するが、中国のメディアが政府の退屈なプロパガンダを垂れ流すだけの時代は遠い昔になった。メディアは利益追求の姿勢を一段と強め、役人や著名人のスキャンダルに一段と多くのページを割くようになった(もちろんそれによってメディアやジャーナリストの立場が危うくならない限り、という条件付きだが)。

 醜聞にポルノの要素が加われば、読者急増は間違いない。インターネットならなおさらだ。このため、得てしてメディアもネチズンもセックスの要素を誇張しがちになる。

 多くの識者は微博ユーザーに、もっと政府の不正を暴いて、汚職は割に合わない犯罪であることを役人に思い知らせてやれと唆す。高級官僚養成機関の中国国家行政学院の汪玉凱(ワン・ユィカイ)教授は、「汚職のツケを真に重くして初めて、役人たちは信頼を回復することができる」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から

ワールド

北朝鮮が約10発の弾道ミサイル発射、東海岸沖の海に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 8
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 9
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 10
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中