最新記事

リビア

カダフィ派新型兵器の出所は中国?

中国の国連決議違反を示唆する極秘文書がリビア国内のゴミの山から見つかった

2011年9月6日(火)17時21分

石油目当て? 政府軍に武器を売り渡す国は少なくないという Louafi Larbi-Reuters

 リビアのカダフィ政権に崩壊の足音が迫っていた今年7月、中国がカダフィ陣営に2億ドル相当の武器売却を持ちかけていたことが、極秘文書から明らかになった。

 カナダのグローブ・アンド・メール紙は9月4日、独自に入手した文書に基づいて、中国がロケット発射装置や対戦車ミサイル、携帯式地対空ミサイルなどの提供をカダフィ政権に打診していたと報道。AFP通信によれば、アルジェリアと南アフリカ経由で武器をリビアに持ち込む方法について極秘交渉が行われていたという。

 グローブ・アンド・メール紙のグレウム・スミス記者が文書を発見したのは、カダフィ政権幹部が多数住むバブ・アカラ近郊のゴミの中。書類には、政府の調達担当部署のレターヘッドが付いていたという。

 一方、中国側は疑惑を否定。「中国企業は直接的にも間接的も、リビアに軍備を提供していない」と、外務省の広報官は語った。

 AFP通信は一連の経緯を以下のように伝えている。


「カナダのグローブ・アンド・メール紙は、複数の中国国営の軍事企業が7月下旬、国連決議に反してカダフィ政権に少なくとも2億ドル相当の武器や弾薬を売ろうとしていたことを示す極秘文書を入手したと報じた。

 同紙のサイトに掲載されている文書を見るかぎり、実際に武器が売却されたかどうかは明らかでないが、カダフィ政権の治安担当高官が7月半ばに北京を訪れ、中国北方工業公司、中国精密機械進出口総公司、中国新興天津進出口公司の担当者と会談したことが記されている。この3社は自社の備蓄兵器すべての売却を提案しており、必要なら追加製造も可能だと伝えたという。


 AFP通信によれば、カダフィ政権の代表団は7月16日に訪中し、国営企業3社を訪問したという。中国はNATO(北大西洋条約機構)のリビアへの軍事介入に反対しているが、対リビア武器禁輸を定めた国連安保理の決議には賛成していた。

 反カダフィ派の国民評議会の軍事部門を率いるオマル・ハリリは、戦場で政府軍が新型兵器を所有していた理由がこの文書によって明らかになったと、グローブ紙に語った。問題の文書はアラビア語で書かれており、リビアの治安当局者によるメモも含まれている。

中国以外の国や企業も武器を提供していた?

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、反政府軍の広報官アブドラマン・ブシンは、適切な国際的手段を通して中国に説明を求めていくと発言。国連の制裁に違反した国は今後、産油国であるリビアとのビジネスにおいて不利益を被ると警告した。「我々は中国とカダフィの交渉が進んでいたことを示す確かな証拠を入手しており、それを裏付ける文書もある」

 ブシンはさらに、中国以外にも多くの国の政府や企業がカダフィ陣営に不法に武器を供与していたと主張し、それを裏付ける文書や兵器が戦場で発見されたとも語っている。「少なくとも10(の国や企業)はすぐに思い浮かぶ」

 一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、グローブ紙の報道が事実である可能性は極めて低いというNATO高官の言葉を引用している(ただし、高官は文書の中身を確認していないという)。

GlobalPost.com 特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中