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中東シリア独裁政権は経済的にも崩壊寸前
抗議デモ続きで国内経済の安定を維持できないアサド政権に、中流以上の国民やビジネスマンがそっぽを向く?
噴出する怒り アサド政権打倒を訴える若者(今月7日、ヨルダンのシリア大使館前で開かれたデモ集会で) Muhammad Hamed-Reuters
日々エスカレートする反政府デモは、5万人の治安部隊を動員しても抑えられない。西部のハマやホムスといった都市でも反乱がほぼ公然化している――。レバノンに拠点を置く米カーネギー国際平和財団中東センターのポール・サーレム所長は、シリア情勢について「もはや後戻りできないところまで来ている」と分析。「(反政府運動による)経済的打撃でシリアは崩壊に近づいている」と、結論付けている。
「最新の調査によると、商業活動と貿易は半分に減り、失業率は2倍に達し、食料と電気の不足はますます深刻化している。すでに200億ドルが国外に流出し、銀行は取り付け騒ぎを恐れ、政府はすざまじい勢いで通貨シリア・ポンドを増発。シリア・ポンドが急速に下落する危険を招いている」。その結果、大都市の企業家や中流層が経済を安定させられない現政権に見切りを付けることになるだろう、とサーレムは見ている。
サーレムによれば、シリアは大規模な政治改革と政治的融和を受け入れるか、内戦に陥るか、という2つの道のどちらかを進む。どちらにしても、シリアの人口の4分の3を占めるスンニ派が権力を握ることになる。これまで半世紀近く政治を独占してきたシーア派の一派で少数派のアラウィー派は政権を奪われる。
いずれにせよ、避けがたい権力構造の変化によって、アサド政権がイラン、そしてイランが支援するレバノンのシーア派武装勢力ヒズボラと築いてきた親密な関係は失われる。
アサド政権の「緩慢な自殺」
シリアの首都ダマスカスに上級アナリストを常駐させているシンクタンクの国際危機グループ(ICG)は最近、シリアの反政府運動に関する2つの報告書をまとめた。
報告書の中でICGはアサド政権について、反政府運動を「外国から支援を受けたイスラム教徒による陰謀」と誤解し、危機回避に使えたはずの「さまざまな資源」を浪費したうえ、「アラウィー派の生き残り」のために反政府運動の制圧を治安部隊の暴力に依存したことによって、「結果的に自分の首を絞めている」と評している。またもう1つの報告書では、アサド政権がなんとしても政権を維持しようと必死になることは「緩慢な自殺」にすぎないとも指摘している。
世界的な2つの人権団体も、シリアの治安部隊が人道に対する罪を犯していると糾弾。アサド政権は国際刑事裁判所(ICC)に告発されるべきだと主張している。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、南部国境沿いの都市ダルアーの留置所で残酷な拷問が行われたり、けがをした抗議デモ参加者が治療を受けるのを治安部隊が妨害している、と告発している。HRWは人権侵害の内容や規模が「組織的なだけでなく国家の政策として実行されている。人道に対する罪に値する」と指摘している。人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルも、西部の都市テル・カラクで治安部隊が同様の人権侵害を行っているという報告書を出している。
アサド政権はまさに四面楚歌の状態に陥っている。その「崩壊」はそれほど遠くないかもしれない。