最新記事

ファッション

両性具有モデル、リア・Tのランウエー革命

2011年7月15日(金)15時13分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ)

 現役時代にブラジルとイタリアのチームで輝かしい成績を残したトニーニョは、夢のような世界で4人の子供たちを育てた。父親が何もかもを決定できたなら、4人全員がスパイクを履いていたはずだ。だがレアンドロの気持ちは違った。

 トニーニョはかなり以前から、レアンドロは変わっていると感じていた。その思いが決定的になったのは、コリンチャンス対サンパウロというブラジル人なら誰もが熱狂する試合に子供たちを連れて行ったとき。レアンドロは興奮するどころか、スタジアムの席で眠ってしまった。

 レアンドロの中では新しいアイデンティティーが芽生えていた。髪を伸ばして豊胸手術を受け、背が高くて痩せっぽちの青年レオは、しなやかなリアに変身していった。

 現在のリアは現実離れした美しさを持つ。コーヒー色の肌、艶やかな髪の中にのぞく上品でシャープなフェースライン、そして少し舌足らずな話し方は、壊れやすくて超フェミニンな印象を与える。唯一アンバランスなのは、異様に長い手とテノールの声だけだが、その声もささやくようにか細い。

 今でこそ自信に満ちているが、10代の頃のリアは女の子に魅かれたかと思えば男の子に魅かれ、自分のアイデンティティーを疑っては強烈な自己嫌悪に陥った。さまざま皮肉や侮辱にも耐えた。「売春婦や尻軽女、性犯罪者などと呼ばれた」とリアは言う。「そのうち気にならなくなった」

 キャリアの始まりは目立たない仕事だった。イタリアで著名スタイリストのパティ・ウィルソンのアシスタントになり、薄給でどうにか生計を立てた。

 転機はジバンシィのデザイナーになる前のリカルド・ティッシとの出会いだった。ティッシはリアのエキゾチックな美しさに衝撃を受け、ファッション業界で働いてみてはどうかと勧めた。「私は美術の勉強をしていたけど、リカルドがあまりにファッションに入れ込んでいたから、その情熱が移ってしまった」と、リアは言う。

 リア・Tと名乗るようになったのはこの頃だ。リアは親の名声にとらわれた人生ではなく、行き先の分からない冒険を選ぶことを決意した。

敬虔なカトリックの国で

 やがてティッシの勧めを受けて、雑誌や広告のモデルの仕事を始めた。ところがエキゾチックな新人ブラジル人モデルの噂を聞き付けたジャーナリストたちが、すぐにリアの素性を調べ上げて暴露してしまった。

 敬虔なカトリック教徒が多いブラジルでは、カーニバルでもない限り、ドラッグクイーンや男装・女装趣味がある人々の肩身は狭い。リアがモデルの仕事を始めたことは、セレーゾ家に大きな衝撃を与えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネアポリスで緊張再燃、トランプ氏「火遊び」と市長

ワールド

トランプ政権、重要鉱物の最低価格保証計画で後退=関

ワールド

米移民捜査官2人が休職処分、ミネアポリスの市民射殺

ビジネス

テスラ、xAIに20億ドル出資へ サイバーキャブ生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 7
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 8
    人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立…
  • 9
    またTACOった...トランプのグリーンランド武力併合案…
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中