最新記事

食の安全

それでも懲りない「毒食品」国家、中国

バドワイザーのボトルの中身を入れ替えるぐらいかわいいほう? 健康に関わる毒食品やニセ薬品はいまだに後を絶たない

2011年6月22日(水)17時35分
エミリー・ロディッシュ

ブランド好き 輸入ビールの値段は国産ビールの10倍以上(写真は03年のビールフェスティバル) Reuters

「バドワイザー」って言えば、それでOK――昔のバドワイザーのコマーシャルで、こんな歌があった。

でも、ちょっと待て。OKを出す前に1つ気がかりな点がある。それって本当に「バド」? 中国ではそう確認した方がいい。

 特に北京市朝陽区で、輸入ビールのボトルに中国産ビールを入れて販売していた4人が逮捕された直後では尚更だ。

 やろうと思えば簡単にできると思うだろう。輸入ビールのボトルを空にして、かなり安い国産ビールを入れる。ラベルはそのまま。結局、売れるのはラベルのおかげでだから。

 中国人のナイトクラブ従業員が地元紙の環球時報に語ったところでは、国産の北京ビールは500ミリリットル入りを50セント以下で買えるが、バドワイザーは330ミリリットル入りでも7ドル75セントだ。

 朝陽区の捜査当局は、ビールのボトルで一杯になった平屋のアパートを発見した。

 環球時報の記事によれば、「捜査員は大きな棚の後ろから音がすることに気付いた。棚を動かすと、壁に穴が開いていて、中庭へ抜けられた。そこでは4人の男女がハイネケンとバドワイザー、カールスバーグのボトルに国産の北京ビールを入れていた」という。

メラミン混入犯は終身刑になったが

 捜査員は、合計で1万1800枚以上の輸入酒のラベルを押収した。「通常、違法製造業者はバーテンダーを雇って、国産ビールの色や味を輸入ビールに似せる」と、ある関係当局者は言う。「こうしたビールは、死人が出る程ひどい代物ではない」

 だからと言って、消費者の信頼が得られる訳でもない。

 中国では近年、次から次へと食品や薬品をめぐる不祥事が噴出し、食品衛生当局の信用はガタ落ちだ。今年に入ってからも、薬物で汚染された豚肉や発癌性物質が含まれたモヤシ、着色料を用いて新しく見せた古いパンなどが市場で摘発された。

 08年に化学物質メラミンが乳製品に混入した事件では乳児6人が死亡し、30万人以上が被害を受けた。今年5月には、その事件で起訴されていた当局関係者ら53人に有罪判決が言い渡され、終身刑を受けた者もいる。

 さらに今週、中国の警察はニセ薬品の製造に関わっていたとされる52人を逮捕。製造されていたニセ薬品には、勃起不全の治療薬バイアグラの他、単に「人間コーヒー」と書いてあるものもあった。

「人間コーヒー」っていったい何?

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中