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カフカス地方

チェチェン独裁者がマラドーナと勝負

2011年5月16日(月)18時43分
ミリアム・エルダー

目的は個人崇拝の強化か、チェチェンのPRか

 大理石と豪華なドアノブで飾り立てられたVIPルームを除けば、スタジアムは非常にモダンなデザインで、外側にはカディロフとロシアのプーチン大統領の巨大なポスターが貼られている。カディロフは試合開始前に「我が国の指導者ウラジーミル・プーチン」に謝意を表すのを忘れなかった。

 チェチェンでは、かつてロシアからの独立を求めて戦ったカディロフがロシア側に寝返ったことを批判するイスラム武装組織の残存勢力が、今も戦闘を繰り広げている。そのため、今回の親善試合では厳重なセキュリティー対策が取られていた。スタジアム周辺の建物の屋根には狙撃手が並び、カラシニコフ銃を手にした迷彩服姿の兵士が街のあちこちで、「マラドーナ、チェチェンへようこそ!」と書かれた看板の下に立っていた。

 カディロフが「世界一のサッカー王国になる」という無茶な計画を考えたのは、チェチェンが正常であることを示すためか。それとも、着実に確立してきた自身への個人崇拝をさらに強化するためか。いずれにしてもカディロフは、多くの世界的スターが自分の主張を支持してくれたと訴えることができる。

 3月の対ブラジル戦の際、カディロフはスター選手たちに報酬を支払った事実はないと語り、彼らは「チェチェン人への敬意」のために来てくれたとしていた。今回の国際選抜チームについても、同様のことを言うだろう。
 
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