最新記事

中東

ジャスミン革命の暴力的第2章

アラブ革命の先陣を切ったチュニジアとエジプトで、再び市民の抗議デモが広がり始めた訳

2011年5月10日(火)17時59分
ジョン・ジェンセン

騒乱へ逆戻り エジプトではコプト教徒とイスラム教徒の衝突をきっかけに市民の不満が噴き出した(カイロ、5月7日) Asmaa Waguih-Reuters

 独裁者の排除は、長い道のりの始まりに過ぎなかった――アラブ世界に革命の嵐を起こした先駆者たちは、そう感じ始めているかもしれない。

 中東の民主化革命が最初に起きたチュニジアとエジプトで先週、街頭デモが再び激化した。

 およそ4カ月前に独裁的なベンアリ政権が崩壊したチュニジアでは、首都チュニスで暫定政権に対する反発するデモが勃発し、再び夜間外出禁止令が発令された。警察当局は8日、催涙ガスを浴びせてデモ参加者を蹴散らした。

 4日間にわたる今回の街頭デモが起きたのは、元内相がフェースブックを通じて「ベンアリ支持者による軍事クーデターがあるかもしれない」と警告したのがきっかけだった。

 エジプトでも先週末、首都カイロの国営放送前で抗議行動が勃発した。西部の貧困地区インババで、キリスト教の一派であるコプト教徒と多数派のイスラム教徒の衝突が起き、コプト教会が炎上。少なくとも12人が死亡、150人以上が負傷した。

 エジプトでは宗教対立はそもそも多くはないが、コプト教徒(総人口8000万人の1割と推計される)の多くは政府軍や警察がしっかりコプト教会を警備していないと、不満を抱いている。

 チュニジアと同様、エジプトではムバラク元大統領が退陣した今年2月以降、暫定政権が国内情勢の安定を図ろうと苦労してきた。両国とも今年中には選挙を実施する予定だが、一筋縄ではいかないかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国から訓練の連絡あったと説明 「規模

ワールド

インドネシアとの貿易協定、崩壊の危機と米高官 「約

ビジネス

来年はボラティリティー高く利益上げるチャンス、資産

ビジネス

航空業界、機体確保に障害でも来年過去最高益 IAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 9
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中