最新記事

ウィキリークス

窮地のアサンジ「性的暴行」の中身

スウェーデン検察に引き渡されれば、アサンジが最も恐れるアメリカに移送され死刑判決を受ける恐れもあるが

2011年2月8日(火)14時34分

追われる身 スウェーデン行きを逃れるためロンドンの裁判所に表れたアサンジ Andrew Winning-Reuters

 内部告発サイト、ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジが、スウェーデンの非公開裁判で裁かれるかもしれない----。同国での性的暴行容疑で昨年12月にイギリスで逮捕され、現在は保釈中のアサンジの身柄引き渡しをめぐる審理が、2月7日からロンドンの裁判所で始まった。

 スウェーデンでは通常、性的暴行容疑の裁判は非公開。そのため、スウェーデンへ移送されれば「開かれた司法の場」で裁かれる権利が侵害されると、アサンジの弁護士ジェフリー・ロバートソンは訴えた。

 傍聴席には、人権活動家でミック・ジャガーの元妻であるビアンカ・ジャガーや、大富豪の娘ジェミマ・カーンなど、アサンジを支持する有名人たちも集まり、身柄引き渡しへの反対を表明した。

 一方、スウェーデン検察側のクレア・モンゴメリー勅選法廷弁護士は、検察当局がアサンジを性的暴行の容疑で起訴する方針だと認めた。「逮捕は明らかに起訴を目的としたものだ」と述べた(スウェーデン検察幹部のマリアンヌ・ナイはこれまで、アサンジに対しては事情聴取を行うだけだと語っていた)。

 アサンジの弁護団側は、起訴されていない以上、身柄の引渡し要求は受け入れられないと訴える見通しだ。

被害者女性の生々しい供述も

 アサンジ本人は、身柄の引渡し要求には政治的な意図があると主張。ウィキリークスが米政府の公電やイラク戦争、アフガニスタン戦争に関する機密書類を暴露したことで、アサンジはアメリカでもさまざまな捜査対象になっている。弁護団側は、自分たちの陳述をネットで全面公開するという特殊な戦術を取っている。

 2日間に及ぶ審理の結果は、今月中に言い渡される予定だ。判決に不服があれば、アサンジはイギリスの最高裁まで上訴できる。弁護団は、いったんスウェーデンに引き渡されれば、そこからアメリカへ送られる恐れがあり、そうなれば死刑判決を受ける可能性もあるとしている。

 AFP通信によれば、警察の捜査書類には被害者とされる女性の供述もある。「Wさん」と記されたその女性は問題の夜、アサンジと合意の上でセックスをしてから一緒に眠ったが、その後で「無理やり挿入されて目が覚めた」と書かれているという。

「彼女がすぐ『(避妊具を)ちゃんと着けたの?』と聞くと、アサンジは『君を着けたよ』と答えた」と書類は続く。「女性が『まさかエイズにかかっていないでしょうね』と言うと、アサンジは『もちろん違う』と答えた」。その後、女性はアサンジに身を任せたらしい。

 書類には、もう1人の被害者が提出したコンドームの検査結果もある。この女性はアサンジが故意にコンドームを破ったと主張しているが、検査結果によるとコンドームをはさみやナイフで切った形跡はなかった。

 果たしてアサンジは、スウェーデンに引き渡されるのか。イギリスの裁判所の判断に世界の注目が集まっている。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、日本の核兵器への野心「徹底抑止」すべき=K

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

アングル:トランプ政権で職を去った元米政府職員、「

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中