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米韓FTAに懸ける李明博の危機感

農家の強い反発も押さえ込んだ背景には、中国依存リスク軽減の狙いも

2011年1月5日(水)16時41分
知久敏之(本誌記者)

日本には脅威 関税撤廃で韓国車の競争力はさらに高まる Seokyong Lee-Bloomberg/Getty Images

 今月アメリカと自由貿易協定(FTA)の最終合意にこぎ着けた韓国。EUに続いてアメリカとも締結の見通しが立ったことで、韓国は世界最多の45カ国とFTA合意したことになる。

 最も注目されるのがアメリカへの乗用車輸出にかかる関税だ。FTA発効後も5年間は現行の2・5%が適用されるが、その後は撤廃される。このほか液晶テレビを含む電気製品など、アメリカ向け輸出品の95%以上の関税が5年以内になくなる。

 焦りを感じているのはライバル日本の自動車メーカー。アメリカ市場の先月の新車販売台数で、韓国の現代自動車は前年比45%増となる4万台余りを売り上げ6位。トヨタやホンダには及ばないが、5位の日産には迫る勢いだ。5年後、韓国車の競争力はさらに増すことになる。
 
 農家の反発が強いのは韓国も日本と同じだが、李明博がアメリカとのFTAに踏み切った背景には、中国との貿易が総輸出入の26%を占める韓国経済の現状がある。朝鮮半島で有事が起きれば中国依存はリスクになりかねない。韓国メディアには、FTAは経済面だけでなくアメリカとの安全保障上の関係強化になると歓迎する論調もある。

[2010年12月22日号掲載]

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