最新記事

アメリカ経済

ブッシュ減税の延長は未来への大きなツケ

2010年12月22日(水)15時31分
ベン・アドラー(ワシントン)

立場によって異なる批判

 民主党と共和党の駆け引きの背景には、社会の2つの異なる層の利益がある。民主党は中間所得層への減税と失業者への給付金の確保を狙い、共和党は最富裕層への減税を確保したい。

 そのため、6日の合意に対する批判は立場によって正反対になる。共和党にすれば、恩恵を受けるべきではない失業者への支援は社会に無意味な負担を負わせることになる。一方、民主党は富裕層への減税など無用な支出だと主張する。

 アメリカ労働総同盟・産別組合会議のリチャード・トラムカ議長のコメントを読めば、左派の考え方がよく分かる。「何カ月も仕事を見つけられずに苦しんでいる中間所得層の世帯や労働者を支援してきた後で、富裕層がさらに潤う様子を目にしなければならないのは受け入れ難いことだ」

 一方で、すべての所得層に何らかの恩恵をもたらす今回の合意が「赤字を拡大するから」反対だという声はあまり聞こえてこない。アメリカの財政赤字は今後2年で5000億ドル増える見込みだ。

 赤字が増えても構わないのかもしれない。赤字拡大で懸念される大きな問題は金利の上昇だが、今のところ、その兆候は見えない。そのため多くの専門家は、赤字の拡大をそれほど怖がる必要はないとの見方を示している。

 だが長い目で見れば、ブッシュ減税などについての今回の合意は大きな問題を生む恐れがある。赤字減らしを後回しにしてでも減税や失業保険の給付延長を望んだ政治家や有権者たちが将来、巨額の財政赤字に文句を言っても誰も耳を貸さないかもしれない。

[2010年12月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏とブダペストで会談へ、トランプ氏が電話会

ビジネス

日銀、政策正常化は極めて慎重に プラス金利への反応

ビジネス

ECB、過度な調整不要 インフレ目標近辺なら=オー

ビジネス

中国経済、産業政策から消費拡大策に移行を=IMF高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中