最新記事

社会

台湾「売春合法化」とアジアの性産業

2010年12月1日(水)18時14分
ジョナサン・アダムズ(台北)

売春婦を狙うおとり捜査

 一方で、COSWASは売春婦の一般的なイメージを改善しようと努めている。彼らの理想は、合法化で売春が堂々と行えるようになり、売春婦が社会的地位を獲得できるようになること。そうすれば斡旋業者を雇って自分たちの売込みを手伝ってもらったり、取り分を増やすことができる。

 しかしそのためには、当局の対策はまだ不十分だとCOSWASは主張する。売春と買春の仲介業者も合法化されるべきだと言うのだ。「売春婦の安全を守るにはこの性産業を隅々まで合法化する必要がある」と、COSWASの王芳平(ワン・ファンピン)は言う。

 彼らの話によれば、売春が合法だった当時、売春婦は稼いだ金額の70〜80%を受け取っていた(残りは仲介業者に渡っていた)。しかし現在は、彼女たちの取り分は60%だという。
 
 いま売春婦にとって脅威なのは仲介業者だけではない。冒頭のナディアとCOSWASの話によると、台北では警察が友人や第三者にカネを払って売春婦に近付かせ、売春婦が値段の交渉を始めた途端に逮捕するという。「客」は罰金を課されたり拘束されることもなく、「目撃者」として扱われる。

 COSWASは昨年、こうしたおとり捜査に対する抗議運動を行ったが、状況はほとんど変わっていないという。「客が怖いのではない。怖いのは警察」とナディアは語った。

GlobalPost.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イラン、11日に第4回核協議 オマーンで

ワールド

習氏、王公安相を米との貿易協議に派遣=新聞

ビジネス

独首相、EUの共同借り入れ排除せず 欧州の防衛力強

ビジネス

独立したFRBの構造、経済の安定を強化 維持される
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 5
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    「金ぴか時代」の王を目指すトランプの下、ホワイト…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中