最新記事

テロ警報

ビンラディンがツイッターを使わない理由

欧米諸国イスラム教徒に対する偏見という拡声器のおかげで、自分から下手な発信をする手間が省けている

2010年10月7日(木)18時08分
クリストファー・ディッキー(中東総局長)

宣伝の腕前も落ちた? 最近では面白みのないメッセージばかり出しているビンラディン REUTERS TV

 私はウサマ・ビンラディンがツイッターでメッセージを流すのを待ち続けているのだが、いまだにその気配がない。

 ビンラディンと側近たちはこの20年間、テロを喧伝する手段としてマスメディアを巧みに利用してきた。だが最近、その「腕前」にも衰えが見える。報道と娯楽との垣根が崩れ、情報があふれかえっているこの21世紀、テロリストたちにとっても世間の注目を集めるのは至難の業だ。ここ5年ほどは、メッセージを発信する一番お気に入りの手段──欧米諸国で罪もない人々を大量殺戮すること──も使えずにいる。

 ビンラディンのプロパガンダも最近は、内容が偏っている上に面白みに欠けてきているようだ。10月に入って彼は13分間の音声メッセージを発表したが、奇妙なことにそれはパキスタンの洪水被害者への支援を呼びかける内容だった。それならなぜ、手っ取り早くツイッターを使わないのだろう?

 考えてみれば当たり前だ。自分から発信せずとも、彼らには恐怖をまきちらすための媒体が他にあるのだ。例えば米国務省のような――。

 米国務省は3日、ヨーロッパに滞在するアメリカ人向けに渡航情報を出し、そのことをツイッターを通じて公表した。だがこれほど意味のないツイートも珍しい。

 渡航情報曰く「(ヨーロッパを)旅行中の米国民はあらゆる方法を用いて周囲を警戒し、身を守るために適切な安全対策を取るべきである」。ずいぶんと大きな網をかけたものだ。

 このあいまいな渡航情報に注目を集めようとして、パトリック・ケネディ国務次官はかえって墓穴を掘ってしまった。彼によれば今回のような「注意喚起」は、大西洋におけるハリケーンのシーズンや太平洋における台風シーズン」も含む、あらゆる種類の危険に対して旅行者に注意を促すためのものだという。

 それに対し『退避勧告』はスーダンのように内戦が続き政府が機能していない国を対象としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正「農業犠牲にせず」と官房長官、トランプ氏コメ発

ワールド

香港の新世界発展、約110億ドルの借り換えを金融機

ワールド

イラン関係ハッカー集団、トランプ氏側近のメール公開

ビジネス

日本製鉄、バイデン前米大統領とCFIUSへの訴訟取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中