最新記事

オーストラリア

豪総選挙を彩ったセックス新党

スローガンは「政府をベッドルームに入れるな」。その政策目標は?

2010年8月25日(水)15時09分
ハリー・サンナ

 8月21日に投開票されたオーストラリアの総選挙は与党・労働党と野党・保守連合が大接戦。1940年以来70年ぶりに、いずれの党も下院議席(定数150)の過半数に達しない「中ぶらりん議会」になることが確実となった。

 22日現在の獲得議席数は、6月に前任のラッドを追い出す形で初の女性首相に就任したギラード率いる労働党が70。トニー・アボット自由党党首の下で3年ぶりの政権奪回を狙う保守連合が72と、野党がわずかに上回っている。

 選挙戦では、ギラードが金融危機を乗り越えた労働党の経済政策の実績を強調し、アボットは政府の無駄遣い批判を展開した。党内不和や鉱山資源業界への新税案などで支持率が落ちた労働党は、苦しい戦いを強いられた。

 そんな選挙戦でひときわ異彩を放ったのが、「政府をベッドルームに入れるな」をスローガンに選挙運動を展開したオーストラリアセックス党(ASP)だ。性教育拡充やネット検閲反対、宗教施設での児童性的虐待問題の徹底調査、性機能障害の薬物治療への公的援助といった政策を掲げている。

 08年に結成されたASPの女性党首フィオナ・パッテンは、職歴の大半をアダルト産業で過ごし、現在はアダルト業界大手エロス・アソシエーション社のCEOを務める。「性関連の法整備に関してオーストラリアは遅れている。残念ながら、アメリカのネオコン(新保守主義)や宗教右派の影響が強い」とパッテンは言う。主に若者からの支持を得て、旧態依然とした保守的な政治文化を変えることを目指してきた。

 ASPが全国の選挙区に擁立した候補者は、パッテン自身のほかにポールダンサーや重量挙げの女子選手、有名コメディアンなど。一部議席が改選された上院で最低でも1議席の獲得を目指したが、かなわなかったもようだ。

[2010年9月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

財政の信認揺らがない限りあらゆる手段使う=経済対策

ビジネス

午後3時のドルは153円後半で上げ一服、前日の急騰

ワールド

米国防長官、アジア各国と会談 安保協力強化で中国け

ワールド

米ロ首脳会談、ウクライナ巡るロシアの強硬姿勢で米が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中