最新記事

テロ

アルカイダ新雑誌をヒットさせる11の助言

若者をジハードに勧誘するためアルカイダが英語版の雑誌を創刊したが、デザインも記事の中身も突っ込みどころが満載

2010年7月21日(水)17時36分
クリストファー・ビーム

センスゼロ アルカイダが気合を入れて創刊した英字紙はデザイン面も今ひとつ

 アルカイダが英語で出版する新雑誌「インスパイア(ひらめきを与える)」は、どうやら名前負けしているようだ。米ナショナル・パブリック・ラジオによれば、1カ月前に創刊されたこの雑誌がターゲットにする読者層は欧米に対するジハードへの参加を考えるような若者たち。だが今ひとつ彼らの心をつかめていない。

 だがメディアコンサルタントの助言さえあれば、どんな問題も解決できる。彼らならこんなアドバイスをするだろう。

(1)ウェブを活用せよ 

 ニュース速報。イスラム教の世界復活の試みは失敗に終わりました。欧米の高級雑誌も絶滅寸前です──後者も、アルカイダにとってあまりいい知らせではない。なぜならインスパイアは67ページの高級雑誌。購読するには、PDFのダウンロードが必要になる。

 今こそ近代化の時だ。インスパイアに必要なのはブログやスライドショー、中東の衛星テレビ局アルジャジーラばりの独占映像を備えた双方向性のウェブサイト。イスラム教が席巻していた8世紀の世界の再現を夢見るのなら、まずするべきなのは21世紀の技術を採用することだ。

(2)日刊化のススメ

 インスパイア創刊から1カ月が経つが、第2号はまだ出版されていない。いいアドバイスがある。日刊化するといい。

 ジハードのニュースは毎日尽きることがない(自爆テロ、宗教令ファトワ、断首刑は特に注目だ)。事件の発生時、あるいは発生前に情報をつかんだら、世界に先駆けて報道したいはず。むしろ1日1回の発刊に甘んじていてはいけない。(イスラム教の礼拝を捧げる)夜明け、正午、午後、日没、夜半も常にニュースを追いかけるべきだ。

(3)デザインの修正を

 表紙のデザインは最低。タイトル、トップニュース、イラスト(預言者ムハンマドはもちろんダメだ)をシンプルにすべき。もっとセンスをよくして、チャートやインフォグラフィック(解説画像)で記事を肉付けしよう。「ママのキッチンで爆弾を作る」方法をくどくどと文章で説明してもダメ。ビジュアルで見せなければ。

(4)ブランド力の向上が必要

 インスパイアのキャッチフレーズは今のところ「......そして信奉者をインスパイアする(やる気にさせる)」。全然インスパイアしない。

 まず何より「インスパイア」が雑誌名とかぶっているのが余計。さらに重要なのは対象読者を絞っていること。広告主は信奉者やコアなファンを大事にするが、同時に信じていない人(あるいは未来の信奉者という言い方をしてもいい)も手に入れたいもの。特定の読者層を遠ざけてはいけない。そのために、石打ち刑のスライドショーが少なめの「異端者版」を出すことになってもやむをえない。

(5)検索エンジンへの最適化を

 インスパイアをウェブ上で探すのは、ウサマ・ビンラディンを探し出すのよりも難しい。グーグルでインスパイアと検索すると、製薬会社や屋根工事業者、ヘアケア製品がヒットするばかり。

 検索エンジンは「ジハード」や「アルカイダ」などのキーワードが入った記事を好んでトップに並べる。「イスラム女性のニカブ(ベールの1種)を禁止するよりも、欧米は真実の顔を覆い隠すニカブを禁止せよ」などといった曖昧な比喩表現ではダメ。もっと検索エンジンに最適な直球の見出しでいこう。「汚らわしい欧米の異端者どもをぶち殺すアルカイダの9・11テロ」といった具合に。

(6)読者ニーズを理解せよ

 読者はインスパイアに何を求めているのか。単なるニュース報道ではない。読者がニュースを理解する手助けをしなければ。スンニ派がシーア派よりも優れていると読者に伝えるだけではダメ。「なぜ」そうなのかを説明しよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中