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対北朝鮮「太陽政策」は捨ててしまえ

2010年5月24日(月)17時36分
クリスチャン・カリル(ジャーナリスト)

 李政権にとって重要なのは、ただでさえ苦しんでいる北朝鮮市民をさらに苦しめることなく、北朝鮮の指導部に打撃を与える「罰」を考え出すことだと、ランド研究所のベネットは主張する。北朝鮮の体制内に亀裂を生み出すような心理作戦を展開して、金正日(キム・ジョンイル)総書記を追い詰めるべきなのかもしれない。

 ベネットによれば、これまで北朝鮮当局は、韓国の脱北者グループなどが北朝鮮に向けて飛ばしている「風船ビラ」に過敏に反応してきた。ビラの文面はたいてい、北朝鮮の体制の無能ぶりと腐敗体質を糾弾し、金正日の後継問題(北朝鮮国内ではほとんど報じられない)に関する新しい動向が記されている。

「北」崩壊シナリオを公言できる

 韓国政府が北朝鮮に対する情報戦をもっと強化すれば効果があるだろうと、ベネットは指摘する。加えて、北朝鮮の体制崩壊、そしてその先に待つ南北統一を見据えて明確な対策を取ることを韓国政府が宣言する必要があると、ベネットは考えている。

 当たり前のことに聞こえるかもしれないが、太陽政策の時代の韓国では、北朝鮮崩壊というシナリオに触れることはタブーだった。しかし、哨戒艦沈没事件が起きた今、韓国人の圧倒的大多数は路線変更を支持するはずだと、ベネットは言う。

 ここで掲げたような政策を実施していく上では、困難も付いて回るだろう。緊迫が増す場面もたびびあるに違いない。北朝鮮が威嚇的な態度を取ることは容易に想像できる。

 それでも李明博は、3月に哨戒艦沈没事件が起きて以降、北朝鮮政策をことごとく手堅くこなしてきた。理性的な判断により政府の方針が決定されると、十分に期待していいだろう----少なくとも、38度線の南側では。

Reprinted with permission from Foreign Policy,24/05/2010.©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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