最新記事

イギリス

「名誉棄損ツーリスト」が英国へ殺到

提訴する側に有利な名誉棄損法のあるイギリスで、ブログやSNSを対象から外せとの声が出ている

2010年5月18日(火)15時41分
クリストファー・ワース

 ロンドンは金融からカルチャーまでさまざまな分野の中心地だが、知る人ぞ知る名誉棄損訴訟のメッカでもある。数百年前に社会的地位の高い紳士の名誉を守るため制定されたイギリスの名誉棄損法は訴訟を起こす側に有利に作られており、勝訴の可能性が高い。

 今では他国で発行された新聞にもインターネットでアクセスできるため、ロンドンにオフィスを持つメディア相手なら訴えられる(イギリス人でなくても訴訟は可能)。そのためロンドンには訴訟を起こしたい「名誉棄損ツーリスト」が世界から集まってくる。損害賠償などのリスクの高まりから、昨年はアメリカの大手新聞数社がイギリスからの撤退を検討した。

 一方、イギリスの名誉棄損法はネット上の表現の自由をめぐる議論も巻き起こしている。誰でも意見を発信できるブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が広まるなか、問題となっているのはネットを単なる活字の媒体ではなく、会話を交わす場として法的に認めるべきかどうかだ。活字の媒体なら、イギリスではオンラインのアプリケーションが名誉棄損の対象になる。

 名誉棄損法の改革を訴える活動家は、ネット上の表現の自由を守るため、ブログや他のオンラインサービスへのコメントを名誉棄損の対象から外すよう求めている。

[2010年5月19日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米大統領、兵器提供でモスクワ攻撃可能かゼレンスキー

ビジネス

世界の投資家心理が急回復、2月以来の強気水準=Bo

ワールド

中豪首脳会談、習氏「さらなる関係発展促進」 懸念が

ビジネス

中国GDP、第2四半期は5.2%増に鈍化 底堅さも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中