最新記事

中国

リオ・ティント事件で外国企業は諦めムード

2010年4月16日(金)14時45分
アイザック・ストーン・フィッシュ(北京支局)

 上海の裁判所は3月29日、英豪系資源大手リオ・ティントの中国責任者スターン・フーに対し、収賄罪で懲役10年の刑を言い渡した。

 中国では西側の多国籍企業が絡む事件が相次いでいる。3月下旬には中国石油化工(シノペック)の元従業員が独ダイムラーから賄賂を受け取ったと認めたし、飲料大手ペプシコも中国人従業員2人が密輸と脱税の罪に問われた。

 外国企業を巻き込んだ汚職事件は以前からあった。だが疑惑対象に対する中国政府(と国営メディア)の対応は以前より厳しい。リオ・ティントをめぐる一連の騒動を通じて、中国政府は外国企業に中国ルールに従う必要性を教えるためなら何でもする、という意思を表している。たとえそのルールがどれほど不明瞭であっても、だ。

 法律が曖昧なら、中国政府は状況に応じてそれを適用も無視もできる。実際、地元紙の法制日報が指摘したように、IBMや独シーメンスなど多国籍企業が絡んだ過去の収賄事件で政府は「過剰なほど沈黙」していた。

 中国にとって「外国企業による汚職」との戦いは、世界市場との戦いでもある。大胆さを増しつつある中国とは対照的に、外国企業の間には悲観的なムードが漂っている。在中国EU商工会議所の会頭もフィナンシャル・タイムズ紙にメンバーがかつてないほど「暗く悲観的」だと寄稿している。

 それでも彼らは中国ルールに従うしかない。中国政府もそれを十分承知している。

[2010年4月21日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

バフェット氏、株主へ「最後の手紙」 後任アベル氏を

ビジネス

米個人投資家、リスクの高い投資を縮小=JPモルガン

ワールド

米最高裁、同性婚合法化判決の撤回申し立てを却下 

ワールド

シリア暫定大統領がホワイトハウス訪問、米国は制裁法
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中