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イギリス人処刑を強行した中国の論理

2010年1月6日(水)18時13分
アイザック・ストーン・フィッシュ

 今でも中国の指導者たちはアヘン戦争の屈辱を持ち出し、怒りを新たにしている。そこにシャイフの一件が持ち上がった。「苦い歴史の記憶と現在の情勢にさいなまれ、中国の人々は(麻薬密輸に対して)特に強い敵意を抱いている」と、在イギリスの中国大使館はコメントしている。

 世界のブログ記事を紹介するサイト「世界の声オンライン」では、次のような中国市民の声が引用されている。「イギリス人の麻薬ディーラーがわが国の法を犯したら、われわれは堂々と正義にのっとり、情け容赦なく処罰することができる。もう他のやつらの命令に従う必要はない」

 シャイフの死刑は、犯罪に断固とした姿勢を示した事例であると同時に、中国の司法の独立を宣言するものでもある。政治からの独立ではなく、欧米人に押し付けられた治外法権のシステムからの独立だ。

 イギリスで巻き起こる抗議の声に対し、中国外務省のスポークスマンは1月4日、中国司法の独立性は何者にも脅かされないと主張した。

 中国紙「環球時報」がサイト上で実施したアンケートでは、1万5000人の回答者のうち97%が死刑を支持すると答えた。国家のアイデンティティーを守るためなら、イギリスとの緊張関係など小さな代償ということらしい。

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