最新記事

イタリア

ベルルスコーニ火遊びのツケ

マフィアとの癒着や贈収賄疑惑に加えてこの女癖の悪さ。「テフロン首相」もついに年貢の納め時か

2009年10月8日(木)15時09分
バービー・ナドー(ローマ支局)

 イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相(72)にとって、今年の夏は不運続きだ。

 例年ならサルデーニャ島の高級リゾート地の別荘でバカンスを楽しんでいるが、今年は夏休み返上で、4月の地震で被災したアブルッツォ州の復興活動に飛び回っている。とはいえ請負業者を信頼していないからではない──自分の人気が落ち目だからだ。

「テフロン首相」の異名を持つベルルスコーニは逆境に強い。3期にわたって、マフィアとの癒着や不正会計処理、弁護士への贈賄といった疑惑をかわしてきた。だが政治家の情事に寛容なヨーロッパでも、最近の相次ぐセックススキャンダルはベルルスコーニの息の根を止めるかもしれない。

 イタリア人は西欧でも特に、政治家の私生活に無関心な国民だ。ベルルスコーニは前妻との離婚前に今の妻との間に子供を儲けている。アメリカ人がビル・クリントン元米大統領やジョン・エドワーズ元上院議員のスキャンダルに目くじらを立てるのが、イタリア人には理解できないようだ。

「イタリア人はアメリカ人のお堅いところや、大統領の私生活に関心を持ち過ぎるところを面白がってきた」と社会学者のアルド・グラッソは言う。だがそんなイタリア人でさえ、ベルルスコーニは羽目を外し過ぎだと言う。

「プーチンのベッド」で待って

 5月、ベルルスコーニが愛人とされる18歳の下着モデルの誕生パーティーに出席したことに夫人が激怒し、離婚の意思を表明。以来、女性関係に関する写真や目撃談、政治的メリットと引き換えに肉体関係を迫った話などが次々と浮上している。

 7月には、1晩1000ユーロの高級コールガール、パトリツィア・ダダーリオとベルルスコーニの会話などを録音したテープの内容が公にされた。ダダーリオがテープを公開したのは、低価格の小規模ホテルの建設許可が下りるようにすると首相が約束したのに、下りなかったから。代わりに欧州議会の議員にしてやると言われたが、彼女は4時間に及ぶテープを反首相派の報道機関に渡したという。

 その中で最も笑えるのは性的な会話だ。ベルルスコーニはシャワーを浴びながら、ダダーリオに「プーチンのベッド」で待っているよう指示する。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(当時)から贈られたキルトで飾った寝室のことだ。

 ダダーリオによると、ベルルスコーニは「雄牛」だから「一晩中眠らない」。ベルルスコーニは、ダダーリオは知人だと認めているが、金を払ってセックスしたことはないと主張。それでは「征服する喜びがない」からだという。

 当局は首相の友人であるジャンパオロ・タランティーニを取り調べ中。首相と高級コールガールの仲介をした容疑だ。公開されたテープの中でタランティーニはダダーリオに、ベルルスコーニはコンドームを使わないと語っている。

「勘弁してよ。(コンドームなしのセックスが安全かどうか)どうして分かるの」。そう訴えるダダーリオにタランティーニは言う。「頼む......相手はベルルスコーニだぜ!」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中