韓国改革派大統領の海図なき船出
だが、盧の著書を読めば、彼が10年前から大統領の座を意識していたのは明らかだ。盧は94年に、自伝『妻よ、私を助けてほしい』を出版。編集者によると、草稿段階では「もし私が大統領だったら」と政策を論じた部分が多かったという(読者が関心をもたないだろうという理由で、こうした記述はすべて削除された)。
同書には、いくつか過去の過ちが記されている。依頼人に法外な弁護料をふっかけたことや、妻に暴力を振るったことなどだ。盧の顧問らは、盧は政治活動を通じて「生まれ変わった」と語っている。
盧は大統領に就任後、まず北朝鮮の核開発問題に対処しなければならない。側近によれば、盧は国防や外交といった重要な閣僚ポストに、経験豊かな実務派を据えるつもりだ。
盧は米政府との関係修復も望んでいるが、北朝鮮問題の解決には威嚇より対話が有効だとする主張を捨てるつもりはない。5月までに実現するとみられる訪米の際にも、その主張を繰り返すはずだ。
北朝鮮関与政策は破綻?
「(ブッシュ大統領には)北朝鮮は門戸を開きはじめ、すでに変わりつつあることを強調したい」と、盧は本誌に語った。「政権の維持や正当な扱い、経済援助など、彼らが求めているものを提供すれば、核開発の野望は捨てるだろう。私たちは北朝鮮を犯罪者ではなく、対話の相手として扱うべきだ」
だが国内でも、北朝鮮に対する関与政策は支持を失いはじめている。2000年6月の南北首脳会談に際して、北朝鮮に対して資金供与が行われていた問題が発覚したからだ。金大中は2月14日、現代グループが首脳会談の直前に約2億ドルを北に送金したことを知っていたと認めている。
この問題は南北首脳会談の歴史的意義を損なっただけではなく、盧の前途をも脅かしている。国会の過半数を握る野党ハンナラ党は、特別検事による真相究明を可能にする法案を提出する構えだ。盧は拒否権を行使できるが、その場合、ハンナラ党は主要閣僚の承認を拒否する可能性がある。
「この問題は、就任直後から盧を悩ませるかもしれない」と、延世大学の李正民(イ・ジョンミン)教授(国際政治学)は言う。「資金が(北の)軍備増強に使われていたことが証明されれば、盧の北朝鮮関与政策は破綻しかねない」
韓国では、大統領の任期は5年1期のみなので、盧には失敗している余裕はない。盧はブッシュと信頼関係を築き、米政府と協力して北朝鮮の核問題を解決する必要がある。その一方で、来年の議会選挙にそなえ、内政でポイントをかせいで新千年民主党の支持拡大を図らなければならない。
冷や汗をかくような局面にもぶつかるはずだ。87年の深夜のドライブで味わったようなスリルを、再び体験することになるだろう。
[2003年3月 5日号掲載]





