最新記事

ネット

「トランプのSNS」パーラーが陰謀論を広げる

A DIET OF HOAXES

2021年3月17日(水)18時00分
マット・スキビンスキ(ニューズガード統括マネジャー)、ケンドリック・マクドナルド(ニューズガード上級アナリスト)
右派のたまり場となったSNSパーラー

パーラーからは多くのデマサイトにリンクが貼られていた Jaap Arriens-Nurphoto/ GETTY IMAGES

<過激な右派のたまり場パーラーが北マケドニアなどに拠点を置く怪しいニュースサイトの集客に貢献>

ツイッターやフェイスブックでは「自由に物が言えなくなった」とぼやくドナルド・トランプ前米大統領の支持者らが、新たに見つけた交流の場がSNSのパーラーだ。

パーラーは今年1月1日に起きた米連邦議会議事堂への乱入事件で襲撃を扇動するなどの役割を果たした疑いが持たれ、一時使えない状態になっていた。2月中旬にサービスを再開したが、私たちの調査でユーザーたちが襲撃事件の前後に偽情報を流すニュースサイトのリンクを盛んにシェアしていたことが分かった。

ニュースサイトの信頼性を評価する格付機関ニューズガードは、メディア監視サービスのピークメトリックスと共同で今年1月第1週にパーラーの投稿に張られた1万7000件超のリンクを分析。その87%がジャーナリズムの基本的な基準を満たしていない、信頼性に欠ける「退場ランク」のニュースサイトであることを突き止めた。

この調査では分析対象をニュース・情報サイトのリンクに絞り、ネット通販サイトや他のSNSの投稿へのリンクなどは除外した。

1月第1週にパーラーのユーザーが最も多くシェアしたニュースサイトは「アメリカン・コンサーバティブズ・トゥデー」で、被リンク数は2917件に上った。サイト名を見るとアメリカの保守系ニュースメディアのようだが、ドメイン登録情報検索サービスのWHOISで調べれば、北マケドニアの都市クマノボで運営されていることが分かる。

開設されたのは昨年12月。以降、昨年の米大統領選で数々のデマを流したいわく付きの政治ニュースサイト「ザ・ゲートウェイパンディット」のパクリ記事を精力的に流し始めた。例えば、票の自動集計機のメーカーがトランプの票をジョー・バイデンの票とカウントする特殊な仕掛けを施していた、といったものだ。

PV稼ぎのお手軽ツールに

このサイトの報道はニューズガードが設定したジャーナリズムの9つの基準全てにおいて不合格で、信頼度スコアは100点満点中0点だ。

そのほか被リンク数で上位を占めたドメインには「ザレジスタンス・ドット・ビデオ」がある。このドメインは、ツイッターから永久追放を食らった陰謀論者アレックス・ジョーンズの動画サイト「バンド・ドット・ビデオ」にリンクしている。ジョーンズの動画サイトは、新型コロナウイルスや米政治絡みのフェイク映像を頻繁に流している。例えば、アリゾナ州では投票にマーカーペンが使われたため、トランプ票が大量に無効になった、といったものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾は警戒態勢維持、中国船は撤収 前日まで大規模演

ワールド

ペルーで列車が正面衝突、マチュピチュ近く 運転手死

ビジネス

中国製造業PMI、12月は50.1に上昇 内需改善

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIへの225億ドル出資完
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中