最新記事

セキュリティ

「身代金」を要求する悪質ソフトにご用心

パソコンのデータを「人質」に金をだまし取るランサムウエアにどう対処すべきか

2012年11月15日(木)15時15分
ウィル・オリマス

脅しはリアル 脅迫を無視してファイルを消去されてしまった被害者もいる Nanette Hoogslag-Ikon Images/Getty Images

 ウェブのページを開いたり、電子メールに書かれたリンクをクリックすると、パソコンの画面が暗くなる。FBIのロゴが入ったウィンドウが左上に出て、その下には誰かの顔が映ったウェブカメラ。クリックして閉じようとしても、ブラウザーは固まっている。ハッと気が付くと──画面からあなたを見詰めているのはあなただ。

 ホラー映画の一場面ではない。このぞっとする仕掛けは、「ランサムウエア」と呼ばれるマルウエア(有害ソフトウエア)の仕業。コンピューター内のファイルなどを使用不能にし、その復元に金銭支払いを促す。データを「人質」にして、「身代金(ランサム)」を要求するのだ。

 この不正プログラムは、悪質なサイトを訪れたりリンクをクリックすると、自動的にダウンロードされる。ネットセキュリティー大手マカフィーによれば、今年第2四半期に検出された新規サンプルは12万件以上。昨年同期の4倍に上る。

 冒頭の例は「レベトン」というランサムウエア。画面にはパソコンのIPアドレスとホストネーム、「コンピューターはロックされています!」というメッセージが現れる。

 警告文によれば、あなたは不法ダウンロードしたファイルを所有し連邦著作権法に違反しているため、罰金または最高で禁錮3年の刑に値する。ただしロックを解く方法が1つだけある。金を払うのだ。48時間か72時間以内に金を払わなければパソコンが使えなくなり、刑事責任まで問われるという。

金を払うべきかどうか

 もちろん刑事責任の話はいんちきだが、ファイルが使えなくなるという脅しは本物だと、ウイルス対策ソフト会社ソフォスのチェスター・ウィズネブスキーは言う。しばらくたってからファイルが消去されたと、複数の被害者が報告している。

 しかし、金で解決できるかどうかははっきりしない。一度払えば、さらに金を要求されるだけかもしれない。分かっているのは、これは自動化されたプログラムだということ。実際の人間が詐欺をしていて、「このファイルは必要なんです」と懇願すれば手心を加えてくれるかも、などとは考えないほうがいい。

 不運にもランサムウエアに感染した場合、どうすればいいのか。まずはパニックにならず、軽はずみな行動を取らないこと。一旦マルウエアがパソコンを制御したら、既に被害は生じている可能性が高い。

 マルウエアの攻撃を受けたことを誰にも言うな、と脅されても無視すること。対処法について、コンピューターセキュリティー専門家に助けを求めるといい。ウイルス対策プログラムが効果的なこともあるが、ほとんどの場合、OSの再インストールが必要だろう。

 最高の予防法は、信用できないウェブサイトを訪れないことだ。サイトやメール、ツイッター、フェイスブック、スカイプのメッセージにある怪しいリンクもクリックしない。最新のセキュリティーパッチ(修正プログラム)で、OSやアプリケーションを更新し、ウイルス対策ソフトウエアを使えばさらに安心だ。ファイルのバックアップを取ることも重要だろう。

 一部のセキュリティー専門家は非公式に、金を払えばファイルを修復してもらえる可能性があるかもしれないと語る。しかし公式のアドバイスは「絶対に払ってはいけない」。多くの場合、その忠告はもっともだ。

 ハッカーが金を手に入れたら、あなたのファイルを修復する動機はほとんどなくなる。こいつはカモだと思って、再びあなたを攻撃する可能性が高いからだ。

© 2012, Slate

[2012年10月24日号掲載]

ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国アント、馬氏の保有株売却を

ワールド

菅首相、新型コロナワクチン追加供給巡り米ファイザー

ワールド

英フィリップ殿下葬儀、女王ら別れ惜しむ 王子兄弟は

ワールド

マスク氏のスペースX、NASAの有人月着陸機受注 

MAGAZINE

特集:日本を置き去りにする デジタル先進国

2021年4月20日号(4/13発売)

コロナを抑え込んだ中国デジタル監視の実態。台湾・韓国にも遅れた日本が今すべきこと

人気ランキング

  • 1

    原発処理水の海洋放出「トリチウム水だから安全」の二重の欺瞞 

  • 2

    イバンカ・トランプ、3カ月間の「沈黙」を破るツイートに保守派が怒った訳

  • 3

    女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を引きずられる──中国

  • 4

    日米を代表する2大怪獣が激突 『ゴジラvsコング』勝…

  • 5

    世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの…

  • 6

    日米首脳会談:菅義偉が国際政治のスターになる日

  • 7

    【ファクトチェック】肛門PCR検査は中国で義務付けら…

  • 8

    東芝 車谷社長の何が悪いのか?

  • 9

    SATCの幻想で期待した映画『デッドリー・イリュージ…

  • 10

    ニルヴァーナ、ドアーズ、ジミヘン、A・ワインハウス…

  • 1

    青色の天然着色料が発見される

  • 2

    ビットコインが定着するか崩壊するか、運命が決まる時は間もなく来る

  • 3

    ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望

  • 4

    世界の銃の半分を所有するアメリカ人、お気に入りの…

  • 5

    ビットコインが、既に失敗した「賢くない」投資であ…

  • 6

    日本だけじゃない...「デジタル後進国」のお粗末過ぎ…

  • 7

    女子中学生がバスの扉に足を挟まれ、30秒間も道路を…

  • 8

    原発処理水の海洋放出「トリチウム水だから安全」の…

  • 9

    仮想通貨で7億円稼いだ「億り人」の意外な素顔と「成…

  • 10

    エヴァと私の26年

  • 1

    太平洋上空の雲で史上最低気温、マイナス111度が観測される

  • 2

    観測されない「何か」が、太陽系に最も近いヒアデス星団を破壊した

  • 3

    「夜中に甘いものが食べたい!」 欲望に駆られたとき愚者は食べ、凡人は我慢する。では賢者は?

  • 4

    EVはもうすぐ時代遅れに? 「エンジンのまま完全カー…

  • 5

    30代男性が急速に「オジサン化」するのはなぜ? やり…

  • 6

    孤独を好み、孤独に強い......日本人は「孤独耐性」…

  • 7

    ブッダの言葉に学ぶ「攻撃的にディスってくる相手」…

  • 8

    カミカゼ・ドローンで戦況は一変 米軍「最強」の座…

  • 9

    硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

  • 10

    アマゾンに慣れきった私たちに、スエズ運河の座礁事…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月