最新記事

米大統領選

討論会の勝敗を左右するメモの活用法

米大統領候補といえば、多くがロースクールでメモの取り方を身に付けた達人ぞろい。いったい何をメモっているのか

2012年10月17日(水)17時42分
フォレスト・ウィックマン

悪い例 最初の討論会では、オバマは下を向いてメモばかり取っていたと批判された(10月3日、コロラド州デンバー) Jim Bourg-Reuters

 来月に迫った米大統領選で16日、バラク・オバマ米大統領と共和党候補のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事による第2回テレビ討論会がニューヨーク州ヘムステッドのホフストラ大学で行われた。第1回の討論会で消極的だったとしてロムニーのリードを許したオバマは、今回の討論会では攻勢に転じて終始主導権を握った。

 第1回の討論会でオバマは、ロムニーの方を向かずにうつむいてメモをとってばかりいる、と批判された。討論中に候補者がメモを取るのは珍しいことではないが、実際のところ候補者たちは何をメモしているのだろうか。

 相手の主張や自分の返答を記していることもある。あるいはただ単に、表情を見られないようにとりあえずペンを走らせている場合もある。討論中にメモを取ることは、自分の返答をうまくまとめるために有効な手段で、候補者の多くがロースクール時代にこの習慣を身につけている。

 ただし、相手が攻撃している最中の「目のやり場」としてメモを活用していることも多い。オバマは4年前の大統領選でもこの戦略を使っていたことで知られている。予備選を戦ったヒラリー・クリントンとの討論会では、「じっと見つめるヒラリーの視線を避けるために、固く口を結んでメモを取っていた」と言われたものだった。本戦での共和党のジョン・マケイン候補との戦いでは、マケインも同じく、怒りの表情を悟られないように「メモ戦略」をとっていた。

 メモを取るという行為は、1960年に行われたアメリカ初のテレビ討論会のときから議論の的だった。当時、大統領選を戦っていたリチャード・ニクソン副大統領は、相手候補のジョン・F・ケネディがルールを破ってあらかじめ用意されたメモを読み上げていたと批判した。これがルール違反かどうかで両者の主張は対立したが、それ以降はメモの扱いについてルールを明確化することになった。

 メモに関するルールはその後どんどん細かくなっていった。共和党のロナルド・レーガンと民主党のウォルター・モンデールによる1984年の大統領選では、討論会のルールとして「メモを含むいかなる形でも、せりふを思い出すための道具を討論会に持ち込むことは認めない」と記されたが、「討論会の最中にメモを取ることはできる」とされている。

メモ合戦だった2004年選挙

 1988年の大統領選での共和党ジョージ・ブッシュと民主党マイケル・デュカキスによる討論会では、ルールはより明確にされ、両候補者は「好きな大きさ、色、種類の紙に」メモを取ることができるとなった。

 米タイム誌の報道によれば、今年の討論会のルールではメモに関してさらに細かく記されているという。両候補が合意した内容として「いかなる道具やメモ、図表やそのほかの文書など有形のものは電子機器も含めて、どちらの候補者も討論会に持ち込むことはできない」とされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中