最新記事

犯罪

なぜコロラド州で銃乱射が繰り返されるのか

コロンバイン高校銃乱射事件から13年、わずか30キロの場所で再び惨劇が起きたのは州法のせい?

2012年7月23日(月)17時15分
リジー・トメイ

隠れた狂気 映画館を襲撃した容疑者ジェームズ・ホームズ The University of Colorado-Reuters

 先週末にコロラド州オーロラ市中心部の映画館を突然襲った悲劇を、13年前のあの事件と重ね合わせた人も多かったに違いない。99年、今回の犯行現場からわずか30キロほどのコロラド州リトルトンで起きた、コロンバイン高校銃乱射事件だ。 

 オーロラ市の映画館を襲撃した容疑者はジェームズ・ホームズ、24歳。7月20日未明、ライフルとショットガン、それにピストル2丁を持って、『バッドマン』シリーズ最新作の『ダークナイト ライジング』を先行上映中の映画館に入り、客に向けて無差別に発砲した。先週末の時点で、死者は12人、負傷者は58人に上った。

 事件を受けて、メディアでは銃規制の是非を問う議論がヒートアップしている。なぜコロラド州で、このような痛ましい事件が繰り返されるのか。州レベルの銃規制に何か特別な欠陥でもあるのだろうか。

 コロラド州警察のウェブサイトによれば、同州では弾薬を込めていようがいまいが銃を「住居や職場、自動車内で」携帯することを認めている。現職もしくは退職した警察官でない限り、外から見えない形で銃を携帯するには郡保安官から許可をもらう必要があるが、銃を所有する際の登録制は禁止している。

学校内でも銃を携帯できる

 しかし、こうした銃に寛容な姿勢が今回の惨劇を招いたと結論づけるのは尚早だ。2年前にニュースサイトのデイリービーストが発表した「銃の販売が最も多い州トップ20」によれば、コロラド州が特に銃の保有率が高いとはいえない。このリストは、銃を販売する際にFBI(米連邦捜査局)のデータベースで客の犯罪歴をチェックした件数が、各州の州民10万人あたり何件あったかを割り出したもの(実際に何回売買されたか、1回あたり何丁売買されたか、何人に売買されたのかを把握するものではない)。

 同リストでは、コロラド州のチェック数は全米で14位。州民10万人につき、1万5086件の売買機会があった。全米1位はケンタッキー州で、3万315件だった。

 もっとも、州レベルの規制がどの程度銃犯罪に影響するかは分からない。デイリービーストの調査によれば、首都ワシントンは人口当たりの銃の売買が全米でも少ないほうだが、犯罪率は全国平均を上回り、治安が悪いことで有名だ。

 今回の銃乱射事件の容疑者ホームズは、6月に退学手続きをするまでコロラド大学医学部大学院で神経科学を専攻していた。同大学では、キャンパス内での銃携帯を禁じていたが、今年3月にコロラド州最高裁がこの規則を覆し、21歳以上の州民は許可があれば銃を携帯できるとする州法をキャンパス内でも適応するという判決を下したばかりだった。

 その代わりというわけではないが、同州では、今回のように人が多い建物の中で銃撃事件が起きた際に迅速に対処できるよう、警察の対応方針を変更していた。以前は、現場に最初に着いた警官は建物の中に駆け込まず、現場を包囲してSWAT(特殊部隊)が到着するのを待つことになっていた。しかしコロンバイン高校銃乱射事件の後は、SWATを待たずに現場に入り、できるだけ早く犯人を殺害するか取り押さえることになった(今回の事件でその方針が適応されたかは分からない)。

 しかし銃乱射が起きた後では、いずれにせよ手遅れだろう。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中