最新記事

オバマ大統領

ノーベル平和賞はありがた迷惑

2009年10月14日(水)14時46分
ケイティ・コノリー(ワシントン支局)

 普通ならば、こういう名誉ある賞を受賞したら盛大にお祝いをするものだろう。だがオバマ米政権の関係者たちにとってはそうはいかない。彼らはオバマ大統領のノーベル平和賞受賞に警戒感を強めていることだろう。

 受賞の知らせが届いたのは、8年に及ぶアフガニスタンでのテロとの戦いに米軍を増派するかどうか再検討しているさなかだ。この受賞は、国際社会が今後は慎重に事を運べというメッセージをオバマに伝えるためだったのだろうか。ノーベル平和賞の受賞者が、一般市民の犠牲者も出ている戦場へ兵士を追加派遣するというのは、一体どのくらいの問題をはらんでいるのか。

 政治的にみれば、今回の受賞は政敵にとって願ってもない批判材料になる。2016年の夏季オリンピックのシカゴ誘致失敗に続いて、反対勢力は喜び勇んでオバマが受賞に不相応だと声を上げるはずだ。

 また昨年の大統領選では、対抗馬のジョン・マケイン上院議員がオバマを「セレブ」と呼んで揶揄したが、今回の受賞でその手の批判が再燃するだろう。当時はお騒がせセレブのパリス・ヒルトンなどと同列に扱われ、「オバマは世界一のセレブ?」などと騒がれた。イメージ先行で中身がないと言わんばかりだった。

 マケインと彼の側近は、オバマの政治家としてのキャリアは浅く、困難な決断を下したり犠牲を払ったことはないといつもばかにしていた。アフガニスタンでさらに4万人の米兵の命を危険にさらすのかどうか──就任からまだ1年もたっていないオバマが、これまでで最も重要な決断を下す直前、時期尚早ともいえるノーベル平和賞を授与されたわけだ。

 ジャーナリストで政治ブロガーとしても有名なミッキー・カウスは、オバマは受賞を辞退すべきだと主張する。請求書の支払いや職探しに追われる国民が、受賞に満足してお祝いムードに浸るオバマの姿を見ても、いらつくだけだろうから。

[2009年10月21日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物が小幅安、市場は対ロ制裁や関税を引き続き注

ワールド

米、メキシコ産トマトの大半に約17%関税 合意離脱

ワールド

米、輸入ドローン・ポリシリコン巡る安保調査開始=商

ワールド

事故調査まだ終わらずとエアインディアCEO、報告書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中