ノーベル賞でゴア出馬説が沸騰
今回の受賞は、ボリビアのエボ・モラレス大統領や、前フィンランド大統領でコソボ国連事務総長特使のマルッティ・アハティサーリなど、全世界から推薦された181の人物・団体を抑えての栄誉だ。ゴアは受賞前から出馬を決めていたが、政治がらみで受賞のチャンスを逃したくなかったのだろうと推測する支持者もいる。
出馬の実現にはあと数週間が勝負ということは、ゴア支持者も理解している。予備選の候補者登録には、たとえばニューヨーク州では10月末~12月上旬で5000人の署名を集めなければならない。
ミシガン州では先日署名運動が始まったが、10月23日までに1万2396人の署名を確保したうえ、ゴアが署名した宣誓供述書を提出する必要がある。地元メディアが8月に発表した世論調査(民主党支持の有権者400人を対象)によるとゴアの支持率は36%で、ヒラリー・クリントン上院議員(32%)を上回る第1位だった。この結果がゴアの決意によい影響を与えるのではないかと、ミシガン州の支持者は期待している。
ゴアの演説に泣いた日
だが楽観はできない。「今でも立候補の可能性が低いことは承知している」と、マサチューセッツ州で出馬要請運動に携わるフレッド・コードは言う。「自分がゴアだったら、(ジョージ・W・ブッシュと戦った)2000年の苦い敗北の後で、再び挑戦する価値はあるかと自問するだろう」
ゴアの広報担当カリー・クライダーによれば、ゴアの答えはこうだ。「熱い支援には心から感謝しているが、次期大統領選に出馬する意思はまったくない」
それでもコーエンはあきらめないだろう。10月12日の早朝、彼はノーベル平和賞の発表を待ちながら、「ゴア大統領」が率いていたはずのアメリカを描いてみせた。「もちろん、イラク戦争は起こらなかった。ゴアは02年の感動的な演説で、開戦したらどうなるかを完璧に言い当てていたのだから。温暖化問題にはホワイトハウス主導で取り組み、議会に具体的な対策を迫っていただろう」
受賞者の名前が発表されると、コーエンは両手を握り締めて言った。「今日は素晴らしい日だ」
「出馬すれば、ゴアは予備選でも本選でも楽勝できる」と話すコーエンに理由を問うと、昨年1月に恋人とカリフォルニア旅行に出かけたときの思い出を語ってくれた。
それは、公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師の記念日だった。モーテルの部屋でテレビをつけると、ゴアが「市民の自由を侵害しているブッシュを批判する」演説をしていた。演説が終わったところで、コーエンと恋人は顔を見合わせた。2人の目には涙が浮かんでいたという。
「政治演説で泣けたのは、2人ともあのときが初めてだった」
[2007年10月24日号掲載]