最新記事

米大統領選

ノーベル賞でゴア出馬説が沸騰

2009年10月13日(火)14時49分
ジェイミー・リノ、アンドルー・ロマーノ

 今回の受賞は、ボリビアのエボ・モラレス大統領や、前フィンランド大統領でコソボ国連事務総長特使のマルッティ・アハティサーリなど、全世界から推薦された181の人物・団体を抑えての栄誉だ。ゴアは受賞前から出馬を決めていたが、政治がらみで受賞のチャンスを逃したくなかったのだろうと推測する支持者もいる。

 出馬の実現にはあと数週間が勝負ということは、ゴア支持者も理解している。予備選の候補者登録には、たとえばニューヨーク州では10月末~12月上旬で5000人の署名を集めなければならない。

 ミシガン州では先日署名運動が始まったが、10月23日までに1万2396人の署名を確保したうえ、ゴアが署名した宣誓供述書を提出する必要がある。地元メディアが8月に発表した世論調査(民主党支持の有権者400人を対象)によるとゴアの支持率は36%で、ヒラリー・クリントン上院議員(32%)を上回る第1位だった。この結果がゴアの決意によい影響を与えるのではないかと、ミシガン州の支持者は期待している。

ゴアの演説に泣いた日

 だが楽観はできない。「今でも立候補の可能性が低いことは承知している」と、マサチューセッツ州で出馬要請運動に携わるフレッド・コードは言う。「自分がゴアだったら、(ジョージ・W・ブッシュと戦った)2000年の苦い敗北の後で、再び挑戦する価値はあるかと自問するだろう」

 ゴアの広報担当カリー・クライダーによれば、ゴアの答えはこうだ。「熱い支援には心から感謝しているが、次期大統領選に出馬する意思はまったくない」

 それでもコーエンはあきらめないだろう。10月12日の早朝、彼はノーベル平和賞の発表を待ちながら、「ゴア大統領」が率いていたはずのアメリカを描いてみせた。「もちろん、イラク戦争は起こらなかった。ゴアは02年の感動的な演説で、開戦したらどうなるかを完璧に言い当てていたのだから。温暖化問題にはホワイトハウス主導で取り組み、議会に具体的な対策を迫っていただろう」

 受賞者の名前が発表されると、コーエンは両手を握り締めて言った。「今日は素晴らしい日だ」

「出馬すれば、ゴアは予備選でも本選でも楽勝できる」と話すコーエンに理由を問うと、昨年1月に恋人とカリフォルニア旅行に出かけたときの思い出を語ってくれた。

 それは、公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師の記念日だった。モーテルの部屋でテレビをつけると、ゴアが「市民の自由を侵害しているブッシュを批判する」演説をしていた。演説が終わったところで、コーエンと恋人は顔を見合わせた。2人の目には涙が浮かんでいたという。

「政治演説で泣けたのは、2人ともあのときが初めてだった」

[2007年10月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中