最新記事

米外交

国連と仲直りアメリカの立役者

キリスト教福音派の人道活動が、アメリカと国連との協調を後押ししている

2009年8月17日(月)15時13分
アンドルー・バスト

 アメリカが国連と仲直りをしつつある。ピュー・リサーチセンターの最新の調査によれば、アメリカ人の61%が国連に好感を抱いている(2年前は48%)。その最大の立役者はオバマ大統領だ。

 経済制裁下のイラク国民を支援するために国連が実施していた石油・食料交換計画をめぐり、汚職疑惑が浮上したのは5年前。その後、当時のブッシュ政権は国連批判の急先鋒だったジョン・ボルトンを国連大使に任命した。国連本部ビルは10階分不要と断じた男だ。

 オバマはその流れを180度変えた。国連大使には大統領選のとき自らの外交顧問を務めたスーザン・ライスを任命。さらにその地位を閣僚級に格上げして、国際協力重視の姿勢を明確にした。どうやら国民もそれに倣ったようだ。

 だがオバマのほかにも意外な立役者がいる。キリスト教福音派だ。彼らはここ数年、人工妊娠中絶や同性婚といった政治的な問題よりも、貧困撲滅など人道活動に力を入れるようになっている。

 全米で人気のリック・ウォレン牧師は、世界各国のキリスト教会を結んで貧困者への援助や医療活動を行う「平和同盟」を創設。毎週2万人もの礼拝参加者を誇るウィリアム・ハイベルス牧師も、U2のボノが設立した人道団体「ワン」への協力を行っている。

 こうした変化に国連も気付き始めている。潘基文国連事務総長は07年、バージニア州アーリントンで福音派の指導者らとの夕食会に出席。「(ミレニアム開発目標を)達成するには、全米福音派協会(NAE)をはじめとする宗教コミュニティーの協力がこれまで以上に必要だ」と語った。

 アメリカがさらに国連に接近する可能性もある。米議会は6月、滞納していた国連分担金を99年までさかのぼって支払うことを決めた。さらに9月にニューヨークの国連本部で開かれる気候変動問題首脳会議でも、ホスト役を務めるオバマの活躍が見られるはずだ。

 8年前は離婚確実に見えたカップルが、ラブラブに戻りそうだ。

[2009年8月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア中銀、予想通り金利据え置き 「物価安定の

ビジネス

自動車関税、大統領令発出後10ー14日で引き下げ 

ワールド

中朝首脳が北京で会談へ、「相当重要な意味を持つ」と

ワールド

ガス管「シベリアの力2」、中国とルート・供給量で合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中