最新記事
考古学

MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明か...正体は海にいる「あの生物」

Geologists May Have Discovered Earth’s First Animals

2025年10月2日(木)18時35分
マリア・アズーラ・ボルペ

海綿が地球初の生命であると考えられる理由

今回の研究は2009年の研究成果を土台としている。

研究チームは当時、オマーンの岩石から30-カーボン(C₃₀)ステランを発見した。これは珍しい種類の分子で、古代の海綿動物と関連づけられた。しかし、その起源については議論を呼び、生物に由来するのではなく自然の化学反応でできた可能性も指摘された。


今回の新しい研究では、さらに珍しい31-カーボンステロール(C₃₁ステロール)が発見された。古代の岩石試料を調べたところ、C₃₀ステランに加え、予想外に高濃度のC₃₁ステラン(C₃₁ステロールが化石化したもの)も確認された。

「C₃₁ステランは、最初からずっとそこにあった」と、研究者のシャワルは述べた。

「大事なのは、きちんとした疑問を持ち、その答えを探すことだ。そうすることで、これらの物質の意味や由来がはっきり分かるようになる」

そして、「この研究は、岩石などの中に残った生物が作り出した分子の痕跡が本当に生命由来なのか、それとも汚染や生き物とは関係ない自然の化学反応によるものなのかを見極める方法を示した」と研究の意義について語った。

その由来を確認するため、研究者らは現生のデモスポンジを分析した。その結果、一部の種が今もC₃₁ステロールを生成していることが分かり、古代のステランと現代の海綿動物との強い関連が示された。

「岩石に含まれるもの、海綿動物に含まれるもの、化学実験室で作れるもの。この3つがそろっており、一致している」とサモンズは語る。

「それらすべてが、海綿動物が地球上で最初期の動物の1つであることを示している」

【参考文献】
Love, G. D., Grosjean, E., Stalvies, C., Fike, D. A., Grotzinger, J. P., Bradley, A. S., Kelly, A. E., Bhatia, M., Meredith, W., Snape, C. E., Bowring, S. A., Condon, D. J., & Summons, R. E. (2009). Fossil steroids record the appearance of Demospongiae during the Cryogenian period. Nature, 457(7230), 718-721.

Summons, R. E. (2025). Chemical characterization of C31 sterols from sponges and Neoproterozoic fossil sterane counterparts. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(41).

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英中部のシナゴーグで襲撃、3人死亡 ユダヤ教の神聖

ビジネス

米シカゴ連銀の新指標、9月失業率4.3%で横ばい 

ビジネス

アングル:米EV市場、税控除終了で崩壊の恐れ 各社

ビジネス

英企業の雇用意欲、20年以降で最も弱く=中銀月次調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 8
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 9
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中