大西洋航路の往復運賃「5000ドル」の旅...21世紀の「超音速」旅客機は夢か現実か

FLIGHT OF FANCY

2025年5月12日(月)09時48分
シオ・バーマン(本誌記者)

>オーバーチュアのデモ機XB1は実機の3分の1のサイズだが、音速の壁を突破した BOOM

オーバーチュアのデモ機XB1は実機の3分の1のサイズだが、音速の壁を突破した BOOM

持続可能な超音速を目指す

対するコンコルドは69年に初飛行を果たし、76年に商業運航を開始した。大西洋の横断に要する時間を大幅に短縮したコンコルドは(少なくとも富裕層にとっては)ヨーロッパとアメリカを行き来する魅力的な手段となった。

しかし運用する航空会社にとって、コンコルドは常に悩みの種だった。


まず、超音速で飛行する際に発生するソニックブーム(衝撃波によって発生する轟音)が地上まで届くため、航路は海上のみに制限された。

当時の石油ショックによる燃料代の高騰も痛手だった。燃費効率の悪い超音速機は敬遠され、航空会社は亜音速でも信頼性が高く、燃費も大幅に改善された新型機を選好するようになった。

そして2000年。エール・フランス4590便としてパリの空港から離陸したコンコルドのタイヤが破裂し、タイヤ片が燃料タンクを直撃してエンジン火災が発生。

近隣のホテルに墜落し、乗客乗員109人全員と地上にいた4人が死亡した。この事故がコンコルドのブランドにとって決定的な打撃となり、03年に寂しく退役した。

あれから22年。ブーム社が目指すのは、超音速の空の旅を持続可能で誰でも手の届くものにすることだ。「みんなが今よりも速く飛べるようになれば、世界はもっといい場所になる」と、ショールは本誌に語った。

「そうすれば仕事をする場所、休暇を過ごす場所の選択肢がぐっと増える。どこかで誰かと恋に落ちる可能性も、きっと広がる。とても大事なことだと、私は思う」

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