世界中の90%以上を生産...「半導体の盾」TSMCは台湾を守れるのか? むしろ中国を駆り立てるのか?

CHOKE POINT FOR CHINA

2025年2月13日(木)14時38分
ケリー・ブラウン(英キングズ・カレッジ・ロンドン中国研究所所長)

高性能チップ

高性能チップ ANNABELLE CHIHーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

1970年代までに、台湾は香港、シンガポール、韓国と共にアジアの「4頭のトラ」と呼ばれる新興経済圏の1つに成長した。

日本や韓国と歩調を合わせるように、他の場所では製造コストがかかりすぎたり汚染が問題になったりする製品や部品を製造・輸出してグローバル市場に参入した。主な輸出先は欧米だった。


農業も依然として重要な産業だったが、大半の土地が山岳地帯で耕作に不向きな台湾では、高付加価値製品の生産こそが将来の富を生み出すためのカギだった。

半導体は、台湾における政府主導の開発プロセスがどのように機能したかを示す典型例だ。初期段階の1970年代、台湾当局の科学技術担当部門はこの分野を有望とはみていなかった。資本集約型産業の要素が強すぎる上に、巨額の投資と財政支援が必要だったからだ。

基盤技術を持たない台湾は、それを他国から調達するか、研究開発に多大なリソースを投入して自前で技術を獲得する必要があった。

この分野では日本、オランダ、アメリカがはるかに先を行っているようにみえた。彼らはあらゆる手段を用いて競争相手の台頭を抑え込もうとするはずだ。台湾の当局者が参入に消極的になるのは当然だった。

経営手腕も技術の知識も

この状況を打破するキーパーソンとなったのが張忠謀(モリス・チャン)だった。この人物の登用が後に大きな成果をもたらすことになる。

【関連記事】【独占】「思考はアメリカ人そのもの」...TSMCを世界的「モンスター企業」に導いた創業者モリス・チャンの「強烈な個性」とは?

チャンは1931年、中国の中流家庭に生まれた。17歳の時、共産党政権の成立直前に祖国を離れた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

壁際なのに「窓側料金」、乗客がデルタとユナイテッド

ワールド

ネタニヤフ氏「豪首相は弱い政治家」、ユダヤ人社会見

ビジネス

英7月小売売上高の公表を2週間延期、内容精査理由に

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米ハイテク株安で半導体関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中