最新記事
SDGsパートナー

車いすもベビーカーも、まっすぐ行ける世界へ!――共生社会を支える地図アプリ「WheeLog!(ウィーログ)」

2025年11月7日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
バリアフリーマップアプリ「WheeLog!」の画面を操作する様子

バリアフリーマップアプリ「WheeLog!」の画面

<段差や多目的トイレ、通行ルートといった情報を当事者の投稿で可視化し、外出の不安を減らす。地図アプリ「WheeLog!」は、情報のバリアフリー化で移動の当たり前を社会に実装する挑戦だ>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


近年、少子高齢化の進行やライフスタイルの多様化が進むなか、誰もが安心して暮らせる社会の必要性が一段と高まっている。その土台にあるのが「移動のしやすさ」だ。

通勤や通学、子どもの送迎、買い物など、日常は移動から始まる。だからこそ、移動環境へのアクセスは暮らしの質を左右する。

しかし、車いすユーザーや高齢者、ベビーカー利用者にとって、段差の有無や多目的トイレの位置、通行可能なルートといった情報が欠けることは、外出そのものをあきらめざるを得ない深刻な障壁となってしまう。

この「情報の壁」は、単なる利便性の問題にとどまらず、就学・就職・結婚といった人生の選択肢にも影響を及ぼしかねない。

情報がないことで行動が制限され、社会参加の機会が奪われる現実は、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない社会」の理念に反するものだ。

この課題に対し、認定特定非営利活動法人ウィーログ(東京都)は「情報のバリアフリー化」を通じて、社会のあり方そのものを変えることを目指している。

情報化社会だからこそ、必要な情報を必要とする人に正確に届ける基盤を整えることが、今まさに問われている。

「行けない」を「行ける」に変えるのは情報だ

newsweekjp20251105084320.jpg

アプリユーザーやボランティア、スポンサーなど、多様な支援者が一堂に会した「WheeLog! 8周年記念イベント」の様子

ウィーログは、障害者や高齢者など移動に困難を抱える人々の外出支援を目的に「情報のバリアフリー化」を推進する団体だ。活動の中心は、ユーザー参加型のバリアフリーマップアプリ「WheeLog!(ウィーログ)」の運営である。

このアプリは、Googleマップをベースに、ユーザーの実体験に基づくバリアフリー情報を世界中で共有できる、新しいバリアフリーマップのプラットフォーム。

ユーザーが実際に通れた道や利用できたトイレ、段差の有無などの「生きた情報」を共有できるのが特徴だ。現在、アプリは10万件以上ダウンロードされ、6万件を超えるスポット情報が蓄積されている(2025年10月時点)。

このアプリの開発の原点には、代表理事・織田友理子氏の強い問題意識があった。

織田氏は難病により車いす生活を送るなか、段差やトイレの有無といった外出に必要な情報を得られず、行動をあきらめざるを得ない状況を幾度となく経験した。

「情報さえあれば車いすユーザーの世界は大きく変わると実感したことが、活動の出発点になりました」と織田氏。

2015年に行われた助成コンテスト「Googleインパクトチャレンジ」で「みんなでつくるバリアフリーマップ」の構想を発表し、グランプリを受賞。2017年にアプリ「WheeLog!」を正式にリリースした。

このアプリで注目すべきは、障害当事者が「情報を受け取る側」から「発信する側」へと変わる構造にある。

自ら通れた道や利用できた設備の情報を投稿することで、当事者は「支援される存在」から「社会に貢献する主体」へと変わり、社会の見方も「助ける対象」から「共に社会をつくる仲間」へと変わっていく。

この視点の変化こそが、ウィーログの活動が持つ大きな社会的意義である。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドのデリー空港で航空便に遅延、管制システム障害

ワールド

中国の大豆輸入、10月は記録的高水準 米中摩擦で南

ワールド

独AfD議員2人がロシア訪問へ、親密関係否定し対話

ビジネス

インド自動車販売、10月は前年比40%増で過去最高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中