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服の価値を未来へ...三陽商会が「SANYO RE: PROJECT」で描くアパレル業界の「循環」のかたち

2025年10月22日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

「宝探しのような感覚」との声も

このプロジェクトの大きな特長は、回収から販売までのプロセスを可能なかぎり内製化することで、効率的かつ低コストな仕組みを作り上げた点にある。

「リユース事業が持続可能であるためには、環境価値だけでなく事業としての収益性の確保が重要です。そのため、小規模でも確実に黒字を出せるビジネスモデルの構築を目指してきました」と松尾氏は語る。

「効率的な運営体制と適切な価格設定により、初年度から営業利益の黒字化を達成できました。これは、サステナビリティ活動としてだけでなく、事業として長期的に継続できる基盤を確立できたことを意味します」

内製化のメリットは、効率やコスト面以外にも表れている。特に、回収品の仕分け作業では、自社製品に精通した社員が取り組むことで、リユース品の品質管理を徹底。これにより、高い品質基準を満たした製品を「三陽商会認定リユース品」として売り出すことができ、顧客からの信頼獲得につながっている。

千葉県市川市の物流倉庫「三陽商会 東日本商品センター」で、回収した衣料品の仕分けをする三陽商会の社員たち

千葉県市川市の物流倉庫「三陽商会 東日本商品センター」で、回収した衣料品の仕分けをする社員たち

加えて、内製化によって、回収から最短1カ月という短期間でリユース品を店頭に並べることも可能に。季節に合ったタイムリーな品揃えを実現している。利用者からは、「1点ものばかりだから、宝探しのような感覚で店内を回るのが楽しい」「毎週来店するのが楽しみになった」といった声もあり、新たなショッピング体験の提供にも成功している。

リユース品の販売は計画対比約130%と好調で、2025年度上半期の回収点数は4万3000点と、目標の10万点に向け順調に推移。衣料品の回収時に、1点につき500ポイント付与される「SANYO MEMBERSHIP」ポイントの利用率も90%を超え、買い替え需要の喚起につながっている。まさに、環境価値と経済価値、両方の追求に成功している事例だ。

現在、リユース品は「サンヨーG&Bアウトレット落合店・潮見店」、「サンヨー・アウトレットストア湘南平塚店」の3店舗と、期間限定販売店舗で展開されている。今後はプロジェクトのさらなる認知拡大と回収量の安定化に取り組みつつ、検証を積み重ねながら、販売店舗の拡大も検討していくという。

「この取り組みは、単なる環境対策ではなく、『ファッションを通じ、美しく豊かな生活文化を創造し、社会の発展に貢献します』という私たちの経営理念を具現化するための挑戦です」と松尾氏は語る。

従来のアパレルのあり方を見直し、服の価値を未来へつなぐ──三陽商会の取り組みは、循環型社会の実現に向けた確かな一歩だ。

◇ ◇ ◇

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